東大大学院・古川大晃、箱根駅伝8年目の挑戦で関東学生連合メンバー入り…ロングバージョン

スポーツ報知
東大大学院の古川大晃(右)

 第98回箱根駅伝(来年1月2、3日)にオープン参加する関東学生連合チームに、東大大学院博士課程1年生の古川大晃がメンバー入りを果たした。熊本大、九州大大学院を経て、今春に東大大学院に進学した文武両道の26歳。熊本・八代高卒業から1浪を含めて8年目で箱根駅伝出場の夢に近づいた。「今、ほんわかした気持ちです」。古川は自身の言葉通り、ほんわかした表情で「箱根への道」の熱い思いを明かした。

 学び続けて、走り続けて、古川は26歳にして「箱根への道」の入り口にたどり着いた。

 「箱根駅伝に出場することは高校生の頃からの夢でした。一度は諦めましたが、今、昔の夢がかなうかもしれない。不思議な感じです。ほんわかした気持ちです」

 箱根駅伝予選会(10月23日)の個人ハーフマラソンで1時間4分10秒で全体88位と力走し、関東学生連合チームに選出された東大大学院の古川は柔和な表情で話す。

 プロランナーの川内優輝(34)=あいおいニッセイ同和損保=は連合の前身に当たる「関東学連選抜」で学習院大初の箱根駅伝ランナーとなり、その後の飛躍につなげた。川内のような個性派ランナーが現れることも連合チームの魅力のひとつだ。今回は古川が異色のランナーとして注目される。

 熊本・八代高時代、3000メートル障害で県大会3位入賞。5000メートルの自己ベストは15分5秒だった。専大、拓大、大東大、日本薬科大と箱根駅伝を目指す関東の私立4校から勧誘を受けたという。

 「関東の大学に行って箱根駅伝を走りたいという希望はありました。家族や高校の先生と話し合い、真剣に進路を考えました。最終的には国立大で勉強したいということと経済的事情で関東の大学に行くことをやめました」

 現役では広島大を受験したが、不合格。高校卒業後、浪人生活に入った。

 「浪人時代は一日中、勉強をしていました。走るのは一日、10分間だけ。10分間、全力で走りました。距離にして3キロちょっとですね」と苦節の日々を振り返る。一浪を経て、地元の熊本大教育学部生涯スポーツ福祉過程に進んだ。

 大学4年間で学問への興味が増し、卒業後、九州大大学院人間環境学府に進学した。同時に競技力も年々、向上。大学院1年時の2019年、全日本大学駅伝に日本学連選抜の一員として出場。エース区間の7区(17・6キロ)で区間14位と健闘した。関東勢以外では日本人トップ。国学院大、城西大、拓大、順大の関東勢4校の選手に勝った。箱根駅伝ランナーに遜色ない競技力を身につけた。

 そして、今春、九州大の大学院を卒業し、東大大学院の総合文化研究科広域科学専攻の博士課程に進学した。

 「進学を決めた理由は勉強したい分野が東大大学院にあったこと、箱根駅伝に出場したかったこと、ちょうど半々ですね」と率直な思いを明かす。難関の入学試験については「筆記試験ではなく、面接でプレゼン(説明)力が問われます。『九州大大学院で何を勉強してきたのか』『東大大学院でもっと何を勉強したいのか』。それを訴えました。僕、それほど頭がいいわけではわけではありませんよ」と古川は謙遜して話す。

 東京・豊島区西巣鴨にある東大の学生寮で生活する。普段は午前8時から午後10時まで目黒区の駒場キャンパス内の研究室で学ぶ。その間、午後5時~7時まで同キャンパス内の競技場で練習する。「九州から出て、東京で初めて暮らしていますけど、本当に楽しいです」と充実の表情を見せる。

 行動力も古川の持ち味だ。

 熊本大4年時には、東大時代の2019年箱根駅伝に出場した近藤秀一(26)=現GMOインターネットグループ=にSNSを通じて連絡を取り、東大で合同練習を行った。「近藤君とは同い年で同じ一浪という共通点もあり、それ以来、今でも仲良くさせてもらっています。近藤君の陸上センスはすごい。自分の考えを分かりやすく言語化する力が優れているので、話していて、とても勉強になります。近藤君は本当に頭がいいです。大学4年の時、初めて会った時、一緒に練習した後、餃子店に行きました。いい思い出です」とうれしそうに語る。

 今年の夏には共通の知人を介して、青学大の原晋監督(54)に夏合宿の特別参加を直訴。新潟・妙高高原で約1週間、青学大の選手たちと汗を流した。「箱根駅伝を走るトップランナーのスピードを実感しました。青学大の選手たちはきつい合宿なのに楽しそうだったことは新鮮でした。原監督にはフォームの欠点や体感トレーニングなどを指導いただいた。とても、勉強になりました」と感謝する。

 原監督も古川を高く評価する。「どん欲に学ぼうという姿勢に研究者としての資質を感じた。意欲的な古川君と一緒に練習できたことは青学大の学生にとっても大変に有意義でした」

 箱根駅伝予選会では大学と大学院は別のチームの扱い。2011年(予選会は2010年)の箱根駅伝で東大大学院の依田崇弘(当時博士課程3年)が当時の関東学連選抜に選出されたが、出走はかなわなかった。今回、古川は出走すれば「東大大学院生」として初の箱根駅伝ランナーとなる。ただ、予選会の個人成績では連合チーム14番手のため、10人の出場メンバーに選ばれるか、微妙な状況だ。

 希望区間のひとつは山上りの5区。13日に神奈川・アネスト岩田ターンパイク箱根の特設コースで行われた「激坂最速王決定戦2021@ターンパイク箱根」登りの部(13・5キロ)に出場し、55分5秒で全体13位、学生12位と奮闘。上りの適性をアピールした。

 「今回も最後まで出走のために全力を尽くしますが、正直に言えば出走の確率は5%くらいと思っています。出走できなくても連合チームに貢献したいと考えていますし、連合チームの雰囲気を知ることは次回以降につながります」

 古川が学ぶ大学院の博士課程は3年制。「今回、走れなくても、まだ2回もチャンスは残っています。できれば次回、2年生の時に出場したい。3年生時は卒論などで忙しくなると思うので」と爽やかに笑う。

 浪人1年、熊本大で4年、九州大大学院で2年も学びながら、さらに今、東大大学院博士課程で学ぶ。高校卒業後、すでに8年目。どれだけ、勉強が好きなのか。「高校の頃はそれほど勉強は好きではありませんでしたが、学べば学ぶほど、勉強が好きになりました」と笑う。将来の目標は「大学の教授」。一生、学び続けるつもりだ。

 学びと走り。文武両道ランナー古川の追究は続く。(竹内 達朗)

 ◆古川 大晃(ふるかわ・ひろあき)1995年10月9日、熊本・八代市生まれ。26歳。八代六中時代はバスケットボール部に所属しながら駅伝に出場。八代高入学と同時に本格的に陸上を始める。八代高では3000メートル障害で県大会3位入賞し、南九州大会に出場。八代高卒業後、1浪を経て、熊本大教育学部生涯スポーツ福祉過程に入学。卒業後、九州大大学院人間環境学府に進学。今年4月に東大大学院の総合文化研究科広域科学専攻の博士課程に進学した。自己ベストは5000メートル14分4秒08、1万メートル29分8秒79、ハーフマラソン1時間4分10秒。マラソンも11回経験しており、自己ベストは2時間19分15秒。176センチ、60キロ。

 ◆関東学生連合チーム 2003~13年に編成された「関東学連選抜」(04年だけ「日本学連選抜」)を改め、15年から「関東学生連合」として再結成された。予選会で敗退した大学の中から個人成績を参考に編成される。各校1人で外国人留学生を除く。過去の本戦出場がない選手に限られるため全員が初出場となる。チーム、個人とも順位がつかないオープン参加。07~13年はチーム、個人の成績が認められており、最高成績は08年の4位。前回大会は出場21チーム中、往路20位相当、復路11位相当、総合20位相当。タスキの色は白。

 ◆箱根駅伝の年齢制限 現在、また、戦前は制限なし。1939年大会に33歳131日で5区区間賞に輝いた村社講平(中大)が最高齢出場とされる。昨春、中学校教員を休職し、駿河台大に編入した今井隆生(4年)は今大会の往路を31歳124日、復路を31歳125日で迎える。1992年までは27歳以下という年齢制限があり、87年大会に28歳だった駒大4年の大八木弘明(現監督)は出場できなかった。

 ◆第98回箱根駅伝の関東学生連合チームの選手とスタッフ(選手の順位、記録は予選会の個人ハーフマラソンの成績)

▽選手

福谷 颯太(筑波大3年)    16位 1時間2分58秒

斎藤 俊輔(立大4年)     19位 1時間3分0秒

中山 雄太(日本薬科大3年)  22位 1時間3分2秒

村上 航大(上武大3年)    24位 1時間3分9秒

並木 寧音(東農大2年)    28位 1時間3分17秒

竹井 祐貴(亜大4年)     35位 1時間3分30秒

諸星 颯大(育英大3年)    39位 1時間3分34秒

大野 陽人(大東大3年)    46位 1時間3分40秒

田島公太郎(慶大1年)     47位 1時間3分41秒

鈴木 康也(麗沢大1年)    51位 1時間3分48秒

宮下 資大(流通経大4年)   57位 1時間3分51秒

厚浦 大地(関東学院大4年)  64位 1時間3分53秒

桐山 剛(拓大4年)      79位 1時間3分59秒

古川 大晃(東大大学院博士1年)88位 1時間4分10秒

辻野 大輝(武蔵野学院大3年) 90位 1時間4分12秒

山中 秀真(城西大2年)   102位 1時間4分23秒

▽スタッフ

監督    山下拓郎(拓大監督)

コーチ   馬場周太(大東大監督)

コーチ   弘山勉(筑波大監督)

マネジャー 松尾航(関東学連幹事)

マネジャー 金子結斗(拓大主務)

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