世界が注目の濱口竜介監督「偶然」描いてベルリン「銀熊賞」受賞…「偶然と想像」演出法や作品への思い語る

スポーツ報知
「短編映画をライフワークにしたい」と話す濱口竜介監督(カメラ・池内 雅彦)

 8月公開の「ドライブ・マイ・カー」で第74回カンヌ国際映画祭の脚本賞を受賞した濱口竜介監督(42)の最新作「偶然と想像」が12月17日に公開される。「偶然」をテーマにした短編3本のオムニバスは、第71回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞。今、世界が最も注目する日本人監督が、台本の読み合わせに1週間以上かける濱口組ならではの演出法や作品に込めた思いを語った。(有野 博幸)

 世界的に輝かしい実績を残している濱口監督の新たな挑戦は「偶然」がテーマの短編集だ。約2時間の上映時間が一般的とされる日本映画の興行システムを踏まえて「短編だと、なかなか上映してもらえない。でも、3本まとめれば約2時間になる」とひらめき、映画の新たな可能性を示した。

 なぜ今、短編を撮ろうと思ったのか。「スタッフもキャストも少人数でできるのでリスクが少なく、自由度が高い。長編でやったことの復習になるし、次の作品への予習にもなる」。ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞したが、「家の近所でリハーサルをした規模の小さな作品が、世界3大映画祭で賞を取る、という驚きがあった。審査員がみんな映画監督なので『これ撮るの、大変だよね』と分かってくれたのかな」。

 3本いずれも自身のオリジナル脚本。配役は知名度に頼らず、「役に合っていること、コミュニケーションを取れること」を重視した。第1話の「魔法(よりもっと不確か)」は古川琴音(25)と中島歩(33)が恋愛観をぶつけ合う会話劇で「役者さん2人の力で物語を成立させてくれた」。釜山国際映画祭で会った「パラサイト 半地下の家族」のポン・ジュノ監督(52)が「あの女優は誰だ?」と古川の演技力を絶賛していたという。

 第2話の「扉は開けたままで」は大学教授をしている友人から聞いた話に着想を得て、昨今のハラスメント問題を反映させた物語。「ドアを開けたままの教授の部屋で性的な危うい事態が発生する。周りの人は何も気づかずに通り過ぎる。それがサスペンスになる」。教授役を演じた渋川清彦(47)の感情を抑えた演技が作品に説得力をもたらす。

 第3話の「もう一度」はコンピューターウイルスによって、インターネットが遮断した世界を描く。撮影は昨年7月。「コロナで人との交流が制限される生活になった。同窓会を描きたかったから、状況を反転させてリアルでしか会えない世の中にした。1話、2話、3話で徐々に偶然の『あり得なさ』を上げていきました。それでも『あながち、なくはない』と思ってもらえるはず」

 撮影前、あえて感情を入れず淡々とした口調でじっくりと台本の読み合わせをするのが濱口流の演出法だ。「それをやることによって紋切り型の演技が排除され、その場で起きたことに反応しやすくなる。サッカーで例えるなら、トラップやパスの技術を持っていれば、余裕を持ってボールをキープできる。スポーツの基礎練習と同じことです」。今回も1話あたり1週間から10日間を読み合わせに費やした。

 海外でも高い評価を受けているが、「海外映画祭でウケる公式は持っていません。作品を見つけてもらえたら、うれしいな、という感じです」。今回の短編集で銀熊賞を受賞したベルリン国際映画祭で審査員から「演じている役柄ではなく、その人自身が話しているように見えた」と言われたことが、自信になっている。

 ◆濱口 竜介(はまぐち・りゅうすけ)1978年12月16日、神奈川県生まれ。42歳。東京芸術大学大学院映像研究科で黒沢清監督に師事。2018年の商業デビュー作「寝ても覚めても」がカンヌ国際映画祭に出品。20年にベネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した黒沢清監督作「スパイの妻」の共同脚本を手掛ける。21年の「ドライブ・マイ・カー」がカンヌ国際映画祭で脚本賞。

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