【今月の歌舞伎座より】たまらなくかわいいマスク姿の口上人形もレア。コロナ禍の逆境を「先読み」する松本幸四郎と市川猿之助の願い

スポーツ報知
歌舞伎座で公演中の「花競忠臣顔見勢」より。冒頭に出てくる口上人形。大変珍しいマスク姿にも注目(松竹提供)

 遅ればせながら、東京・歌舞伎座11月公演(26日まで)の第3部「花競忠臣顔見勢(はなくらべぎしのかおみせ)」を見た。忠臣蔵外伝が、超高速で約2時間の中で展開していく。「忠臣蔵」でおなじみの、冒頭幕前での口上人形から引きつけられた。

 かわいらしい1枚の写真をご覧ください。これまで劇場の宣伝スタッフに役者の場面写真をお願いすることはあっても、口上人形の写真を注文したのは初めて。正直、ダメ元で聞いてみると「あります」と即答で返ってきた。恐るべし。

 口上人形は時節柄、ちっちゃなマスクを着用。しかもマスクには歌舞伎座のシンボルマーク「鳳凰丸」までしっかり入っている。個人的にツボにはまり、思わず吹き出してしまった。2体出てくる口上人形の声は、今作を生み出し、複数の役も演じている市川猿之助(演出も兼務)と松本幸四郎だ。

 「四十七士が勢揃い致しましては、密を避ける事が出来ませぬ。何卒人数を数えたりせず鷹揚(おうよう)の御見物を、請い願い上げ奉りまする」と幸四郎の声。コロナを逆手に取ったようなユーモラスさで楽しい世界を作り出し、お客さんを引き込んでいく。

 これを見ながら、同時にコロナ流行初期の頃が思い出され、おかしみの後、涙が出そうになった。幸四郎はいち早くZoomを使ったオンラインでの歌舞伎「図夢歌舞伎」を発案。総合芸術の舞台を濃厚接触なく個々の空間で演じるという不可能を可能にしてみせ、多くを驚かせた。「歴史を絶やしてはならない」という一心が突き動かしていた。

 一方の猿之助はコロナになって早くから、これから従来のような恵まれた形での公演はしばらく来ないだろう、いやもう来ないのではないか。そういうことも見据えてやっていかなければ、ということを幾度となく言い続けてきた。

 そして自分たち個人のことだけでも大変な時期に、歌舞伎の未来を考えた公演がこの舞台だ。坂東新悟、中村隼人、尾上右近、中村米吉、中村福之助、中村歌昇、中村歌之助、中村鷹之資(たかのすけ)ら成長株といわれる若手が大役を生き生きと演じている。

 「これからの歌舞伎界を、間違いなく動かしてゆく、いや、ゆかねばならない若手俳優たちに存分に活躍してもらおう」と猿之助は筋書きにも書いている。本来なら毎年1月は花形役者による「浅草歌舞伎」が行われるが、来年も中止に。2人の先輩が後輩に期待し、愛情を込めたこの演目の意義の大きさを、改めて考えるのだった。(記者コラム)

芸能

宝塚歌劇特集
NEWS読売・報知 モバイルGIANTS 個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真 法人向け紙面・写真使用申請