【大学野球】早大・今井脩斗いきなり3冠王の「逆転人生」 4年間ほぼ出番なし最後の秋に大ブレイク

大学ラストシーズンで3冠王に輝き、大ブレイクした早大・今井
大学ラストシーズンで3冠王に輝き、大ブレイクした早大・今井

 東京六大学野球秋季リーグ戦は、慶大の30年ぶり春秋連覇で幕を閉じた。勝てば優勝という慶大2回戦を引き分けて優勝を逃した2位・早大は、今季途中からレギュラーに定着した今井脩斗一塁手(4年)が戦後15人目となる3冠王を獲得。大学で現役生活にピリオドを打つ予定から急転、社会人野球の強豪・トヨタ自動車からオファーが届き、プレー継続の道が開けた。なぜ、ラストシーズンに大ブレイクできたのか。激レアすぎる大学野球人生に迫った。

 ものすごい勢いで打ちまくった。今井は今秋、チーム2カード目の東大戦から「8番・一塁」でスタメンに名を連ねると、ヒットを連発。4番に昇格した4カード目の明大戦を終えた時点で打率5割7分7厘、3本塁打、14打点で3冠をキープ。優勝をかけた早慶戦で計8打数1安打に終わり、01年秋に慶大・喜多隆志(元ロッテ、現・興国高監督)が記録したシーズン最高打率5割3分5厘の更新こそ逃したが、4割7分1厘、3本塁打、14打点で戦後15人目となる3冠王に輝いた。

 だが、イマイ? 誰?と思った人がほとんどだろう。それもそのはず。野球では無名の早大本庄出身で、今春までのリーグ戦通算安打は2本だけ。今井自身も「こんなことがあるんだとビックリです」と目を丸くするほどだ。だが、その才能を早くから買っていた人物がいる。元ロッテ投手の小宮山悟監督(56)だ。

東京六大学リーグの3冠王
東京六大学リーグの3冠王

 小宮山監督「体つき(178センチ、90キロ)を見たら分かるでしょ。パワーはケタ違いだし、スイングスピードも速い。それでいてバットコントロールもいい。飛ばす力は今まで見た選手の中で一番。バッティングだけなら十分プロレベルですよ」

 実際、就任1年目の19年秋には、当時2年生だった今井を代打で4試合に起用。昨年は「秘密兵器」として中軸を任せる構想を温めていた。だが、昨年は春秋通じて出場ゼロ。なぜか。それには、笑うに笑えないアクシデントがあった。

 今井「あれは去年の6月でした。夜中にトレーニングルームでベンチプレスをしてたら、120キロのバーベルを持ち上げる時に手を滑らせて胸に落としてしまって…。救急車で病院に運ばれたんですが、胸骨の骨折で春(コロナ禍で8月に開催)、秋のリーグ戦ともに棒に振ってしまいました」

早大・今井のリーグ戦通算成績
早大・今井のリーグ戦通算成績

 最終学年を迎えた今春も、開幕直前に右肘を痛めてリタイア。シーズン終盤に戦列に復帰し、今夏のオープン戦でも好調を維持。4番の座をつかみかけていた今秋の開幕直前に、今度は大きな問題を起こした。フリー打撃中に課されていた守備練習を3日連続でサボったことが指揮官の逆鱗(げきりん)に触れたのだ。

 小宮山監督「守れねえヤツが守る練習もしねえ。そんなヤツを試合で使ったら、泥にまみれ、血のにじむような努力でワセダのユニホームを手にした先輩方に失礼だ! メンバーから外す!」

 今井によれば「データ班とミーティングをしてました」。だが、指揮官の目には好きなバッティングだけして、苦手な守備はやらなかった―と映った。その後、謝罪のため寮の監督室を訪ね、「自分が間違ってました。もう一度チャンスをください!」と頭を下げたのだが、その時の格好が「ヨレヨレのTシャツにハーフパンツ」(小宮山監督談)。火に油を注ぐことになり、開幕カードの立大戦はベンチ入りすらできなかった。

 野球継続の道を諦め、集大成として臨むはずだったシーズンが事実上、終わった。だが、丸山壮史主将(4年)が立大戦後、監督に今井の戦列復帰を直訴。自身も現役時代に主将を務めていた指揮官は「キャプテンの顔に免じて、ラインアップに戻した」。そこからの大爆発で、一気に社会人球界のトップチームからのオファーも手にしたのだから、人生は分からないものだ。

 ちなみに、小宮山監督は今秋の開幕前、今井に「右中間に、左バッターが引っ張ったような打球を打て。それができれば、お前は絶対に首位打者を取れる」と伝えていた。もちろん、守備練習のサボりが発覚する前のことであることは言うまでもないが。

 「あれがなかったら、今頃どうなっていたのか…。自分のために動いてくれた仲間には、感謝してもしきれないです」と今井。激動の大学4年間を経た異色のスラッガーが、仲間への感謝を胸に神宮から巣立っていった。(片岡泰彦)

 ◆今井脩斗(いまい・しゅうと)1999年5月9日、埼玉・加須市生まれ。22歳。小2から野球を始め、中学時代は加須シニアに所属。自己推薦で進学した早大本庄では2年秋から「3番・左翼」で、3年夏の県4回戦敗退が最高成績で通算15本塁打。小さい頃に憧れたのは元西武・カブレラ。「逆方向にもホームランを打つし、一発で試合を決める姿が衝撃的でした」。50メートル6秒4、遠投100メートル。178センチ、90キロ。右投右打。

大学ラストシーズンで3冠王に輝き、大ブレイクした早大・今井
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