◆高校野球秋季関東大会 ▽準々決勝 山梨学院9―0白鴎大足利(7回コールド)(2日・J:COMスタジアム土浦)
山梨学院(山梨1位)が白鴎大足利(栃木1位)を9―0の7回コールドでくだし、2年ぶりのセンバツ(20年はコロナ禍により中止)を当確にした。榎谷礼央投手(2年)はコールドながら7回完封で、祖父・鈴木詔彦さん、父・榎谷優史さん(ともに静岡・浜松商)についで三世代での甲子園出場の可能性が高まった。
勝利の瞬間、肩の荷が少しだけ軽くなった気がした。9点リードの7回2死一、二塁で思い切り右腕を振ると、右飛で試合終了。ベンチから飛び出す仲間の姿を見ると、榎谷の笑顔も弾けた。7回コールドながら5安打完封に「甲子園にいきたい気持ちが強かった」と熱い思いを口にした。
140キロ前後の直球にチェンジアップ、カットボールを織り交ぜ、3回まで無安打投球。4回1死で三塁打を打たれたが、後続を打ち取り無失点。その後は三塁さえ踏ませなかった。吉田洸二監督は「榎谷がしっかりと試合を作ってくれた。関東の代表とやって素晴らしい投球だった」。エースの力投に6回まで毎回得点と打線も応えてくれた。
浜松市出身。母方の祖父・鈴木詔彦さん、父・榎谷優史さんはともに浜松商(静岡)で甲子園に出場。幼少の頃から祖父の家に行くと、自然と甲子園に出場した話を聞かされ、憧れた。野球を教えてくれた父からは2日の朝にLINEで「なんとしても(センバツを)つかみ取ろう」とメッセージが届いた。生まれたときからの宿命を成し遂げ大きく胸を張るかと思いきや、「仲間が助けてくれた」と周囲への感謝を忘れなかった。
飛躍のきっかけは今春、長崎・大崎高をセンバツ初出場に導いた清水央彦監督だ。吉田監督が清峰高監督時代にコーチだった間柄で、息子の山梨学院・吉田健人部長にとっては幼少期から知る存在。山梨県大会後の10月に吉田部長の地元である長崎へ赴いた際に、榎谷の動画を見せた。「身体が横振りになり上手投げなのにサイドスローの要素と混同している。もっと縦に振ることができたらいい」と助言した。
吉田部長は山梨に戻ると早速、榎谷に指導した。清峰時代に今村猛(現広島)を育てた名伯楽の言うとおりにすると縦に腕を振ることでカットボールがより落ちるようになった。チェンジアップも効果的に決まるようになると、関東大会の強打者も芯を外して打ち取れるようになった。
準決勝は6日に浦和学院と対戦(J:COMスタジアム土浦)する。山梨勢で秋季関東大会で決勝に進出すれば98年に優勝した市川以来23年ぶり。関東王者でさらに自信をつけて、三代続けての聖地へと乗り込む。(山田 豊)