飯伏幸太、衝撃の自爆負けで終幕…新日本プロレス最大の祭典「G1クライマックス」が迎えた曲がり角

スポーツ報知
21日のG1クライマックス優勝決定戦でレフェリーストップ負けを喫し、オカダ・カズチカ(右)に謝罪する飯伏幸太(カメラ・佐々木 清勝)

 思わず目を覆ってしまった。場内に響き渡った衝撃音とリング上で5分以上、全く動けなくなった飯伏幸太(39)の姿に試合中に亡くなった三沢光晴さんやプラム麻里子さんの悲劇までもが頭をよぎった。

 21日、東京・日本武道館で行われた新日本プロレスの最強シングル決定戦「G1クライマックス31」の優勝決定戦で悲劇は起こった。

 史上初のG1・3連覇を目指した飯伏はオカダ・カズチカ(33)と対戦。試合中盤には強烈なラリアット、トップロープからのケブラーダ、シットダウン式パワーボムと大技を連発。ハイキックからのカミゴェもきめ、一気に勝負に出た。

 25分過ぎ、コーナートップに上った飯伏は「行くぞ! オラッ」と叫ぶと、大技・フェニックススプラッシュを仕掛けたが、オカダに素早くかわされ、リングに顔面と肩を強打。完全に動けなくなったその姿にレッドシューズ海野レフェリーが即座にレフェリーストップを宣告。25分37秒、オカダの勝利が決まった。

 自身を気遣い、指を1本立てて再戦を要求するオカダに「すみませんでした」と謝罪。動かない右腕を抱え、観客に謝罪しながら退場していった飯伏の背中に私は目頭が熱くなると同時に大事に至らずに良かったと、胸をなで下ろした。

 最強のヘビー級戦士を決する新日最大の大会・G1クライマックスも91年の初開催から31回。思えば、今大会ほどケガ人が続出したケースはなかった。

 飯伏やIWGP世界ヘビー級王者・鷹木信悟(38)とともに優勝候補と目された内藤哲也(39)は9月18日の大阪府立体育館大会での初戦・ザック・セイバーJr.(33)戦で左ひざ内側側副靱帯損傷、半月板損傷の重傷を負い、残り8戦すべてを欠場。内藤―飯伏、内藤―鷹木といったファン待望の黄金カードが消滅した。

 開幕から後藤洋央紀(42)、SANADA(33)という強豪を連破し、波に乗ったかに見えたタイチ(41)も脇腹を痛め、その後は分厚いテーピングをして強行出場も本来の闘いは最後までできなかった。

 初年度から真夏に開催されてきたG1だったが、昨年から東京五輪(延期)のため、秋開催に。新型コロナ対策のため、参加20選手をA、B、2つのブロックに分けた闘いは完全ターンオーバー制が敷かれた。従来ならブロック戦を闘う10選手以外の別ブロックの選手も日々、タッグマッチなどで出場してきたが、今回はG1のみの5試合に絞られる大会がほとんどだった。

 コロナ禍に加え、そうした試合数の少なさからか観客動員もやや不振だった。上限制限があるとは言え、大会場である日本武道館の21日の観客数は3861人。他の会場でも大阪府立体育会館で2188人(9月19日)、横浜武道館で874人(10月18日)など空席があった。武道館での最終2連戦始め全19大会中13大会が平日開催だったことも観客数の伸び悩みに拍車をかけたのだろう。

 消毒、検温を徹底した上で入場の観客たちも声を出しての応援は最後まで禁じられた。米国に自宅のあるKENTA(40)や外国勢のタマ・トンガ(39)、タンガ・ロア(38)らは来日後、2週間の隔離期間を経ての参戦となった。

 ハンディばかりが目立つ悪コンディションの中、それでも選び抜かれた20人のヘビー級戦士たちの熱い闘いは最後まで観客の心を引きつけた。

 特に今大会絶好調だったオカダの完全復活は多くのファンが待ち望んでいたものだったが、それだけに、まさに「クライマックス」だった優勝決定戦での飯伏のレフェリーストップ負けは残念の一言。25分以降も2人が全力で闘い続けていたら、年間ベストバウト確実の熱いファイトが展開されただろう。

 7月に誤嚥性(ごえんせい)肺炎を発症し、2か月に渡って欠場。後に「もうプロレスはできないと思った」と明かしたほどの重症だった飯伏は今回、闘うごとに調子を取り戻し、優勝決定戦まで駒を進めた。しかし、最後の最後に決して万全ではない体調による落とし穴があったと、私は見る。

 1か月の間に最低でも9試合のシングルマッチを闘う過酷さこそがG1が最高峰の闘いと称される理由だが、それでも、今回ほど重症者が続出してしまっては、興行自体が成り立たなくなる危険性がある。

 トップ・ヘビー級戦士たちが普段は見られない新鮮なマッチメイクで一騎打ちを続けるG1の魅力は保持したままで大会期間を2か月間に延長するなどの改善は果たしてできないものだろうか。

 この1か月間、命がけの闘いを続けるレスラーたちの姿を見続け、声を出しての応援が禁じられた観客たちの懸命の手拍子によるエールを聞き続けた私は心の底からそう願う。もう、リング上でのレスラーの悲劇は見たくないから。(記者コラム・中村 健吾)

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