【日本ハム】栗山英樹監督の選手育成論 清宮幸太郎と村上宗隆の比較から見えた信念

スポーツ報知
日本ハム・清宮(左)と話す栗山監督

 日本ハム・栗山英樹監督の退任が16日、球団から発表された。斎藤佑樹、大谷翔平、清宮幸太郎。指揮官の下には多くの高校野球のスターたちが集まってきた。彼らのようにドラフト1位で入団した選手たちは、世の中の注目度も高い。数字が出なければ批判にもさらされるし、同世代の選手と比較されることも多い。指揮官はそんな宿命を背負った選手たちを、要所要所で「まだ早いのではないか?」と思われるタイミングでも1軍で起用してきた。

 栗山監督に清宮の育成法について尋ねたことがある。高校通算111本塁打の強打者には、1年目から1軍でチャンスを与えた。清宮自身も期待に応え、入団から3年連続で7本塁打を放ってきた。だが入団4年目の今年は初めて1軍昇格なし(10月20日現在)。2軍で450打席(これは今季イースタン、ウエスタン唯一の400超え)を経験することとなった。

 一方でよく比較対象にあがるヤクルトの村上宗隆は、1年目の1軍出場はわずか6試合だった。代わりに2軍で427打席に立ち、イースタン優秀選手賞を受賞。2年目に開幕1軍を射止めると、一気に覚醒し36本塁打で新人王。4年目の今季は侍ジャパンで東京五輪金メダルに貢献してみせた。

 現時点では分水嶺(れい)となっているように見える「1年目の過ごし方」。1軍で使いながらの育成ではなく、2軍での下地作りを最初にしていれば…という後悔はないのか。そういうニュアンスの質問だった。

 指揮官は意味をくんで答えてくれた。「省けるものは省かないと。省けるっていうのは、出来ているから省くって意味ね。出来ているものに時間をかけるなら、1軍で時間をかけた方が大きなものが出来るっていう考え方。プロ野球なので、やっぱり見たい選手を活躍させるという責任がある」。

 私は、プロ野球ファンは深層心理では常人離れした“怪物”の誕生を見たいのだと思う。甲子園決勝で引き分け再試合の末、全国制覇を果たした国民的スターが、シーズン30勝する。投げては165キロの投手が、二刀流でメジャーで本塁打王を獲得する。伝統校出身のスラッガーが、世界最多本塁打記録を更新する。指揮官は「無理だ」と言われる夢物語を現実のものとすべく、「省けるものは省いて」きた。

 2軍での100打席より、1軍での1打席。2軍での20登板より1軍での1登板。その経験が、潜在能力を呼び起こす可能性がある。「若手は2軍で経験を積ませてから」という“常識”が、“怪物”の誕生を遅らせ、将来の邪魔になる場合もある。日本プロ野球5年のキャリアでメジャーへと飛び出せた大谷は、まさにその成功例だった。

 もちろん、伸び悩む選手もいる。不本意な成績のままユニホームを脱いだ選手もいた。「その批判は甘んじて受けるよ。それは俺に能力がなかったってだけの話なので。半分は俺の責任だから、責任も感じているのよ。申し訳ないと思っている」。重責を背負わせた選手が苦しむ姿には、同じくらい心を痛めてきた。加熱することもあった選手や監督自身への批判も耳に入っていたはずだ。

 だが指揮官の一貫した信念は、ぶれることはなかった。「そういう中に1個くらい大きなものが生まれると信じてやらなかったら、そういうものは生まれない。なんとなく無難にやって、みんなから文句言われないようにやるなんて、そんなくだらない人生は送りたくない。そんなものじゃないから、プロ野球は」。

 “夢は正夢”。栗山監督の座右の銘だ。今季終了まで指揮を取る監督。残り試合、どんな夢の種をまくのか期待して見ていたい。(北海道支局日本ハム担当・秦雄太郎)

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