【記者コラム:小林玲花】悔し涙の代表落ちから4年、樋口新葉のトリプルアクセルに見えた「執念」

スポーツ報知
カーニバル・オン・アイスで躍動的な演技を披露した樋口新葉(10月3日撮影=カメラ・矢口 亨)

 2017年12月24日、平昌五輪代表選考を兼ねた全日本選手権の最終日。五輪の代表発表で樋口新葉(明大)の名前は呼ばれなかった。17―18年シーズンは絶好調で、GPシリーズ中国杯2位、ロシア杯3位でGPファイナルにも出場したが、選考会本番で右足首を負傷。4位に終わり五輪切符を逃した。泣き崩れ、「すみません」と一言だけ残し、関係者に支えられながら会場を後にした姿は今でも目に焼き付いている。

 樋口はすぐに自身のツイッターを更新した。「倍返しの始まりだ。大変だ、だけど4年もかけてじっくりじっくり煮込むからきっと美味しくなるね。まだこれで終わりじゃない。次があるんだ。やってやろう」などと、2回に分けて気持ちをぶつけた。夢破れたその日、樋口は新たな夢に向かって歩み始めていた。

 そしてついに2度目の勝負となる北京五輪シーズンが開幕。樋口はこの4年間で大きな進化を遂げた。10月2日に行われたジャパンオープンで、大技トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を試合で初成功。GOE(出来栄え点)2・40点を引き出す完璧なジャンプだった。17年4月の国別対抗戦の公式練習で初めて着氷してから、約4年半もの時が経っていた。

 2020年11月、樋口にインタビューの時間をもらい、その少し前に練習を見学した。終盤、疲労MAXな状態で始まったのがトリプルアクセルの猛特訓だった。「はぁはぁ」と苦しそうな呼吸が、氷上を滑るスケート靴の音よりも大きく聞こえた。見ているこっちも息があがりそうなほど。「見ての通り、めちゃくちゃつらくて(笑い)。常に息が上がっている練習が多い」と本人も音を上げる内容。しかし、表情は明るく「全部(プログラムを)通しても、また通すくらいの体力はある。そのあとにトリプルアクセルの練習をやっても、後半でできたりとか、すごく頑張りがいがある。ちょっとずつ強くなってきているのかな」。北京五輪イヤー、ついに努力が身を結んだ。

 北京五輪の日本女子出場枠は3。最大の勝負は12月の全日本選手権(さいたまスーパーリーナ)で、残りはわずか2か月半しかない。女子は樋口、紀平梨花(トヨタ自動車)、坂本花織(シスメックス)、宮原知子(木下グループ)、三原舞依(シスメックス)、松生理乃(中京大中京高)、河辺愛菜(木下アカデミー)と、トップ選手の実力が拮抗(きっこう)し、史上まれに見るし烈な戦いが待ち受ける。その中でも樋口は「4年前の悔しい気持ちを忘れることなく頑張って来た」。前回の“リベンジ”を果たすべく、人一倍強い思いを抱いている。(小林 玲花)

 ◆小林 玲花(こばやし・れいか) 2016年入社。記者2年目で2018年冬季平昌五輪でフィギュアスケート、カーリング取材を担当。今夏の東京五輪ではバスケットボール、体操、スポーツクライミングを主に担当した。

スポーツ

NEWS読売・報知 モバイルGIANTS 個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真 法人向け紙面・写真使用申請