11日に都内のホテルでプロ野球ドラフト会議が行われる。ドラフト1位候補の大学生候補を紹介する連載の最終回は、筑波大(首都大学)の152キロ左腕・佐藤隼輔(4年)。96年オリックス1位指名の杉本友(筑波大)以来、2人目となる国立大出身のドラ1指名を狙う。
長い手足をしなやかに使い、佐藤はキレのあるボールを投げ込む。最速152キロの直球に、変化球はスライダーとチェンジアップの2種類だけ。それでも、制球よく両コーナーを突きアウトを積み重ねていく。日本ハム・大渕スカウト部長は「直球は球質のよさに加えて強さもある。変化球も精度が高い」と評価する。
今春のリーグ戦は好投しながらも勝負どころで甘く入り、2勝4敗、防御率2・63にとどまった。夏場は細かい制球力を磨き直し、伸びのある直球を低めに集めることを徹底。「膨らんでしまって空振りが取れてなかった」というスライダーの軌道も修正し、9月11日の東海大との開幕戦(平塚)を迎えた。
12球団22人のスカウトが見守る中、直球は自己最速を1キロ更新する152キロを計測。スライダーは右打者の膝元に食い込み、空振りを奪った。だが4回1死一塁の場面で、投球時に右腹部に激痛が走り緊急降板。「ベンチ裏に戻ったら、呼吸もしんどいくらいでした。夏の成果は出せたとは思うんですけど…」
診断は右内腹斜筋の肉離れ。ドラフト前の復帰は難しいかと思われていたが、治療とリハビリに専念。予定よりも早く9月29日にキャッチボールを再開すると、ブルペン投球、シート打撃登板を順調にこなした。10日の桜美林大戦(浦安)にはベンチ入りし、登板する可能性も出てきた。
「投げることになれば、しっかりといい投球をしたいです」。ドラフトのためではない。優勝の可能性を残すチームのために投げることが、25年ぶりとなる国立大出身ドラ1指名へつながっていく。(片岡 泰彦)=おわり=