芸能生活51年、自らのがん再発も堂々と公表…「ザ・キャスター」小倉智昭氏の凄み

スポーツ報知
生出演したラジオ番組で膀胱がんの肺への転移を公表した小倉智昭氏

 半世紀にわたって芸能界でトップを張ってきた大物キャスターの矜持(きょうじ)を見せつけられた会見だった。

 フリーアナウンサーの小倉智昭氏(74)が4日、文化放送「くにまるジャパン 極」(月~金曜・前9時)に生出演し、膀胱(ぼうこう)がんが肺に転移したことを報告。6日から入院し、年内は治療に専念することを明かした。

 この日のラジオで「まだ元気なんだって。自分でも抗がん剤治療するのが信じられない。痛くもかゆくもない」と言い切った上で一部で「ステージ4の肺がん」と報じられた点について、「正しくはステージ4の膀胱がんが肺に転移ということ」と、きっちりと訂正して見せた。

 16年5月に膀胱がん罹患(りかん)を公表。18年11月には膀胱の全摘出手術に踏み切ったが、昨年11月の検査で左右の肺に影があるのが分かり、経過観察を続けてきた。症状に変化はなかったが、念のため9月下旬に精密検査を受けると転移が判明。膀胱がんを告知されてから手術するまで2年半が経過しており「先延ばしにしたことが転移につながったのでは」と悔やむ一幕もあった。

 そして、ここからが小倉氏の真骨頂だった。

 ラジオ生出演後、笑顔で待ち構えた取材陣の前に現れると、自身の言葉で丁寧に病状を説明。「膀胱がんのステージ4って余命1年半とかいうんですね、データからいうと。ただ、(自分は)そういう状況ではないと思っている。(医師から)『がんの進行が遅いし、小さいから完治できると思います』と言われています」とし、多くの応援メッセージが届いていることも明かした上で「期待に応えて帰って来ようと思います」と終始、笑顔で語った。

 あまり前例のないがん再発公表会見に同日放送の日本テレビ系「情報ライブ ミヤネ屋」では、スタジオ出演の芸能リポーター・井上公造氏(64)が「膀胱がんを公表された後も闘病されている様子を全部、情報公開されて視聴者の方に分かっていただくような状況を作られた。それは『テレビに出て、こういうことをやっている使命だと自分は思っている』とおっしゃってました」と話した。

 TBS系情報番組「ゴゴスマ」には小倉氏と長年、共演し、自身も悪性リンパ腫から復帰した元フジテレビでフリーの笠井信輔アナウンサー(58)が電話出演。「小倉さんは(一部報道で紙面の)1面に載ったことに関して、ブーブー言ってました。『なんで俺が1面なんだよ。(エンゼルスの)大谷だろうが、今日は』って」と明かした。

 決して公にしたくはなかっただろう自身の大病をサービス精神たっぷりに、時にはユーモアさえまじえて話し続けたその姿に、私の記憶は3年前のフジテレビの大型スタジオへとフラッシュバックしていた。

 それは18年3月22日のこと。小倉氏が22年間に渡ってメインキャスターを務め、今年3月に終了した同局系朝の情報番組「とくダネ!」のリニューアル(当時)にあたっての取材会が開かれた。

 アシスタントを務める同局の伊藤利尋、山崎夕貴両アナを両隣に従えて登場した小倉氏。16年7月に放送回数4452回を記録。同一司会者による全国ネット情報番組の最多放送回数記録を樹立していた大物は、まさに貫禄十分。真っ黒に日焼けした顔で登場した。

 毎朝の大型情報番組を20年以上、スタジオのど真ん中で回し続けてきた大物司会者の凄(すご)みを私が心の底から感じたのは、こう質問した時だった。

 「ネット全盛の今、小倉さんが『とくダネ!』の生放送中に話したことが、即座にネットニュースとなる。自分自身がニュースの発信者にもなっている現状をどう思いますか?」―

 こちらを見て、ニヤリと笑った小倉氏は「(ネットの)反応が速いのは知ってますし、番組が終わって、スタッフと『きっと火ついてるよね』とか『炎上してるよね』というと、『炎上してま~す』って」と舞台裏を明かした上で「これ言うと、たぶん炎上するなって承知の上で炎上させている部分もありますし、なんで、これで、こんな騒ぎになっちゃったんだろう、ちゃんと最初から最後まで聞いてくれたら、こんなことにならないのになと思うこともあります。ただ、良きにつけ悪しきにつけ、そうやって話題になるのはいいことだと思ってます。これからも、どんどん書いていただくなり、叩いていただくなり」と、真正面から私の顔を見つめて答えた。

 その時、小倉氏が見せたのは、常に炎上も上等の情報の伝え手としての固い決意。その場で話したとおり、膀胱の全摘出手術の際も「視聴者が興味があるなら」と闘病中、何度も電話出演。ニュースの発信者として、話題を呼び続けた。

 そこにあるのは、自身が関わる番組と自身に興味を持ち、見続け、聞き続けてくれる視聴者、リスナーに情報を届けねばという思いと、筋金入りのマスコミ人としての誇りだった。

 あれから3年半が経過した。相当の体力を消耗しただろうラジオ生出演後の囲み会見で記者1人1人の目を見ながら、丁寧に質問に答え続ける、その姿に、私の心は揺さぶられた。

 51年間、芸能界で生き抜いてきた小倉智昭という人は本当に強くて、かっこいい。今、尊敬の念とともに完治報告会見の時を心底、待っている。(記者コラム・中村 健吾)

芸能

宝塚歌劇特集
NEWS読売・報知 モバイルGIANTS 個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真 法人向け紙面・写真使用申請