幼少から西武ファン動画見まくり! “その瞬間”を想像すると、ワクワクが止まらない。今季、直接NPB入りを目指す県内唯一の高校生となった三島南・前田は「『選ばれたら』しか考えてないです。その時に困らないように、ひたすら練習してます」と笑った。週6日、後輩に交じって汗を流し、うち3日はジムに通う。182センチ、98キロ。体はすでにプロ並みに仕上がっている。
幼い頃から西武ファン。中でも黄金期の4番・清原和博に憧れた。過去の西武の映像や動画などを見ているときに存在を知った。「センターからライト方向に(本塁打を)打てる」。特に目を奪われたのが94年、巨人との日本シリーズ。桑田から放ったバックスクリーンへの2発に「完璧だった」と鳥肌が立った。「野球での清原さんは神様。何があろうとスーパースター」と、ブレずに背中を追っている。
センバツで活躍評価が急上昇 3年間指導した稲木恵介監督(42)は「(漫画ドラゴンボールに登場し形態を変えて進化した)フリーザみたいな選手」と独特な表現で評価する。入学後、夏までに本塁打を放つなど非凡さを発揮。だがバント練習に失敗しヘルメットをたたきつけ、指揮官に雷を落とされるなど未熟な面もあった。結局1年夏はベンチ外。「自分としてはレギュラーをつかんでやろうと思っていたのに、3年生にかなわなかった。なぜ入れなかったか考えるようになった」。
以後は大振りせず、率を残す意識を高めた。1年秋からは体作りにも着手。2年春にコロナ休校に入ると一気に6キロ近く増量し、稲木監督を驚かせた。迎えた3年春にはセンバツに出場。朝食会場で緊張から仲間の箸が止まる中、一人ニコニコしながらおかわりしていた。「夢の舞台に立てたことが楽しくて」しょうがなかった。右翼フェンス直撃三塁打を含む2安打を放ち、スカウトの評価が急上昇。春までの夢「消防士」は、自然と「プロ野球選手」に変わっていた。
50メートル走6秒0、通算31発、遠投105メートル。身体能力は折り紙付きで3年間故障離脱もなかった。三島南からプロ入りすれば64~65年に中日でプレーした山口春光以来。ドラフト指名を経ての入団なら初(66年東京オリオンズ4位の井深均は入団拒否)となる。抜群の“戦闘力”を誇る大砲はラブコールを信じている。