世界が求める血 欧州でも“ディープインパクト系”の確立へ

スポーツ報知
現役時代のディープインパクト(手前)

 2019年7月30日。日本競馬界に衝撃が走った。現役時代に無敗でクラシック3冠など、G1・7勝を挙げ、種牡馬としても、数々のG1ホースを輩出したディープインパクトが17歳という若さで天国へ旅立った。競馬記者1年目の私にとっても、衝撃的なニュースだった。

 彼の偉大さを最近改めて感じる機会があった。今年の英オークスを史上最大の16馬身差で圧勝したスノーフォールの父はディープインパクトだ。3歳春からG1・3連勝を飾り、今週の凱旋門賞出走を予定している。9月初旬から同馬の取材を行い、詳しくは9月28日付けの本紙紙面を参照してほしいが、ここではそこの“こぼれ話”を書き加えたい。

 クールモアがディープインパクトに注目した理由が意外だった。もちろん血統背景や産駒の活躍も重要な要素だが、同牧場のファームマネージャーを務めるエディ・フィッツパトリック氏は、「ディープのお母さん、ウインドインハーヘアは、我々と非常に昔からつながりが深いアイルランドの牧場の馬なんだ。だから、彼の走りはずっと最初から興味を持って見ていた。彼の血を求めたのは必然だったのかもしれない」と、説明してくれた。

 ウインドインハーヘアは30歳を迎えても元気で、北海道安平町のノーザンホースパークで余生を過ごしている。現役時代は英オークス2着に入るなど、競走馬としても優秀だった。繁殖入りし、7番子として産まれたのがディープインパクトだ。日本での産駒の走りは、他の種牡馬を圧倒するもので、それに伴い種付け料も高騰した。それでも、海外の関係者からは、活躍は“軽い日本の芝”に限定されているものだと信じられていた。「日本でのディープ産駒の活躍を見ていたが、走りが軽く、少し欧州の重たい馬場には適すのかどうかは疑問だった。だから、ガリレオの牝馬を持って行った」とエディ氏。スタミナがあり、タフな特徴があるガリレオの子を持って行き、どのような馬が誕生するのか―。クールモアとしても新たな挑戦だった。その中で誕生したのが、18年の英2000ギニーの覇者サクソンウォリアーだ。

 今年、クールモアにとっても悲しい別れがあった。同場でけい養され、現代の欧州競馬をけん引してきた大種牡馬ガリレオの死だ。後継種牡馬がどうなるのか―。ディープを失った日本競馬に似通った部分を感じる。エディ氏は「(ディープの子)サクソンウォリアーの子がどのような走りを見せてくれるのか、非常に楽しみです。私たちは、日本のディープだけでなく、アメリカにもアメリカンファラオ、ジャスティファイを付けに、牝馬を送っている」と話し、世界各地の血を求め、繁殖牝馬を送っていることを教えてくれた。また日本からもノーザンファームは、同場ではないが、フランケルとの交配のためや、他の大種牡馬の血を求め、海を渡っている。強い馬作りに国境はない―。そう教えられた瞬間だった。

 最後になるが、エディ氏は、キーンランドセールの合間をぬって、記者の取材に応じてくれた。細かな質問でも、非常に丁寧に答えてくれたことが印象的だった。改めて感謝を伝えたい。

 世界のホースマンが求める日本近代競馬の結晶は、今後セピア色に色褪せることはない。近い将来“ディープインパクト系”が欧州でも確立されることを信じている。

(中央競馬担当・松浦 拓馬)

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