巨人・松原聖弥の担当スカウトも驚く成長ぶり 異色の経歴、育成指名…24日から阪神戦

スポーツ報知
松原聖弥

 巨人の松原聖弥外野手が22日の広島戦(マツダ)で規定打席に到達した。現在371打席。最終的にレギュラーシーズンの規定打席(443打席)をクリアすれば、育成選手出身では球団史上初の快挙となる。

 松原は17日のヤクルト戦(東京D)で10号本塁打を放ち、セ・リーグの育成選手出身では史上初のシーズン2ケタ本塁打を達成した。23日の広島戦でも1安打を放ち、10試合連続安打中。ここまで111試合出場で打率2割7分3厘、10本塁打、13盗塁の好成績を残している。

 野球人生の大きな分岐点は2016年10月20日のプロ野球ドラフト会議だった。指名がなければ一般就職の可能性もあった中、巨人から育成5位指名。夢への扉が開かれた。

 この日、巨人担当だった私は東京・八王子の創価大キャンパスに取材に行っていた。前日19日に巨人が田中正義投手の1位指名を公表していた。午後5時からのドラフト会議。5球団競合の末にソフトバンクが田中の交渉権を獲得。巨人の外れ1位は中京学院大・吉川尚輝内野手だった。

 そこから岐阜への移動は時間的に無理だったため、創価大を離れて周辺で待機し、近隣で巨人の指名選手が出た場合に備えていた。そんな中、巨人が育成ドラフト5位で指名したのが明星大の松原だった。

 明星大のキャンパスは東京・日野市にあり、比較的近い。私は松原の取材に急行することになった。とはいえ時間は午後7時を過ぎていた。野球部マネジャーに電話し、今から取材可能かたずねると「何時まででも待ちます」とありがたい返事をいただいた。

 学校では他の野球部員も帰宅せず一緒に待機してくれていた。楽天に育成2位の南要輔内野手とともに、明星大史上初のドラフト指名選手ということで、学内は大盛り上がりだった。

 会見はスポーツ報知の単独取材となり、松原は「仙台育英高の先輩でもある(当時巨人の)橋本到さんが目標。足を生かして支配下登録目指します」と決意表明。「兄はお笑い芸人の卵みたいな感じ」と現在はお笑いコンビ・ロングアイランドで大活躍する松原ゆいのことや、小学生時代に習っていた水泳でしなやかな体をつくり、趣味のビリヤードで集中力が磨かれたことなどを教えてくれた。

 驚いたのはその経歴だった。実家は大阪。「大阪にいても甲子園に出るのは難しい。その時、育英が強かったので。寮生活もしてみたかった」と一般受験で仙台育英に合格。チームは3年夏に甲子園出場も、松原はメンバー外でアルプススタンドで応援していた。

 3年夏で野球部は引退。当時、震災の影響などで同校の名門の陸上競技部(長距離)の主力選手が愛知・豊川高に集団転校したことから、松原が野球部を退部し、助っ人として同部に転部した。「毎日1時間以上走りっぱなし。きつかったです」。1日10キロ走を2か月継続。結局、松原は県予選のメンバーに入れず「チームも都大路に行けなかった」と12月の駅伝全国大会出場が20年連続で途切れる悪夢も味わったが持久力は急成長した。

 首都大学野球リーグ2部の明星大では、4年春まで5季連続ベストナインを獲得。それでも、担当の長谷川国利スカウト(現巨人総務人事部参与)が指名候補リストに加えたのは4年になってからだったという。「打撃は意外性があって肩も強い。ただ、フライアウトが多かった。四球で出塁したと思ったらけん制アウトになったり、凡ミスも多かった。でも足はものすごく速くて一芸に秀でる部分はあった。事前の進路調査で育成契約でもプロに行きたい、他球団から話が全く来ていないとのことだったので、ポテンシャルの高さに期待して育成5位で指名した」と振り返る。

 1年目の17年に3軍で100試合45盗塁。2年目の18年途中に支配下登録をつかむも1軍出場なし、2軍ではイースタン・リーグ新記録のシーズン134安打を記録した。同年オフにMLB選抜とのエキシビションマッチでランニング本塁打を放ち、メジャーリーガーから注目を浴びた。19年は2軍で経験を積み、昨年1軍デビュー。今年の大活躍と飛躍を続ける。

 特に今年はFAで梶谷隆幸が加わり、外野を守る新外国人としてテームズが入団(故障もありシーズン途中に退団)。丸、亀井、ウィーラーなどライバルが多い激しい生存競争に生き残り、規定打席に到達した。

 長谷川氏は松原が10号本塁打を放った際に祝福の連絡をし「来年は盗塁を3倍(現在は13盗塁)に増やして30盗塁以上を」と伝えたという。「ドラフトで指名した時はここまでの活躍は想像していませんでした。想像以上です」と担当スカウト冥利に尽きる思いを胸に、さらなる成長を楽しみにしている。

 巨人は24日から本拠地で阪神との3連戦。松原の今季の対阪神は打率3割5厘で、対セ・リーグ5球団の中で最も高い。同期入団で仲良しの同い年、吉川尚輝との「ナオマツ」1、2番コンビの存在感は日に日に増す。雑草魂を胸に数々の逆境を乗り越え、走攻守で存在感をみせる「育成の星」松原に大きな期待がかかる。(巨人担当・片岡 優帆)

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