JRA最年長重賞V 柴田善臣騎手55歳「何でも楽しむ、競馬も楽しむ」その人生観とは

スポーツ報知
55歳の年齢を感じさせない柴田善臣騎手

 現役最年長、55歳の柴田善臣騎手=美浦・フリー=の周りには、いつも人が集まってくる。その輪は常に楽しそうだ。若手の台頭が著しい昨今にあっても、8月のレパードSをメイショウムラクモで1番人気に応えて勝利し、02年のステイヤーズS(ホットシークレットで制覇)で岡部幸雄元騎手が記録した54歳0か月31日を抜いてJRA最年長重賞制覇の記録を更新した。その存在感は、武豊、横山典とともに、まったく陰りを見せない。

 現役生活は37年目に入った。「なぜここまで長くやれるのか?」 当然、疑問が沸くが、いつも答えは明確だ。「競馬が楽しんだよ」。さらに聞いた。「楽しむって実は難しいことですよね」。その質問にも即決だ。「楽しむって突き詰めることだよね。競馬ってすごく奥深いんだ。答えが分からないものって、どうして? なぜこうなるんだろう? って思って考える。そうなると今度は、次はこう乗ってみようとか、こうしたらどうかって考えるでしょ。それが面白いんだよ。大事なお金をかけてくれているファンの人には申し訳ないけど、趣味みたいな感じだよね。本当に好きなんだ、競馬が」とまるで子どものようにうれしそうに教えてくれた。

 ワイン、釣り、愛犬、車…と挙げればきりがないほど、多趣味で知られるベテランは、私生活でも自然とそうなるという。「このワインの原料は、どこでつくられて、どういうルートでくるんだろうとか、いろいろ考えるとワインのおいしさもまた深まる。最近は、ウイスキーにはまってるんだけど、これもまた深いんだ。そいうのを考えていくと楽しくてしょうがないよね。その中で1番楽しいのが競馬だから」。55歳を支える原動力は、あくなき探究心だ。

 もちろん、騎手は危険がともない毎レース命をかけて乗っている。ケガも常につきもの。「楽しむ」だけではやってられないはず。実際、昨年11月21日の東京4Rでパドックで落馬し左第5中足骨を骨折。今年1月に戦列に復帰しているが、歩いているときはまだ「痛い」と話す。それでも、「馬に乗っている時は痛くない。むしろ、より気をつけて乗るからいい騎乗ができるよ」と、ケガをジョークに替える余裕がベテランにはある。

 最後に失礼な質問をさせてもらった。「キャリアの終わりって考えたりするんですか」。これも、即答。「そりゃ、考えるよ。もう年だからね。ただ、まだ競馬が楽しいし、面白いんだ。衰えだって感じていないし、まだ乗るよ。でも、ずっと競馬中心の生活。辞めた時はどうなんだろね。うん、何かそれを考えたらまた楽しくなってきた」。すべてを受け入れ、今を生きる姿は実に格好いい。話を終え、自転車で軽快に茨城・美浦トレーニングセンターを後にする姿を見送った帰り、48歳アラフィフの記者の脚取りも、軽やかだったのは言うまでもない。(中央競馬担当・松末 守司)

競馬

NEWS読売・報知 モバイルGIANTS 個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真 法人向け紙面・写真使用申請