将棋の女性アマチュア日本一を決めるムアツプラス杯第53期女流アマ名人戦(主催=日本将棋連盟、特別協賛=昭和西川株式会社、後援=報知新聞社)が20日、東京都墨田区のKFCホールで行われ、国士舘大1年の磯谷祐維(いそや・ゆい)さん(18)が初優勝を飾った。
2012、13年に連覇した強豪の小野ゆかりさん(29)との決勝戦。先手番で対振り飛車の引き角戦法「鳥刺し」を用いた磯谷さんは、駒音高く積極果敢な指し回しを貫いて力勝負を制した。「女流アマ名人戦はアマ棋戦の中でトップの争いです。ただ優勝したいとずっと思っていましたので、優勝できてうれしいです。どの将棋も自分らしく全力を出し切れました」。表彰式では昭和西川の新ブランド「ムアツプラス」のマットレスと枕を贈呈され、笑顔がこぼれた。
18年から女子アマ王位戦2連覇などの棋歴を持つ磯谷さんは、過去にアマチュア枠で参加した女流棋戦でも9勝7敗と勝ち越している。さらに結果を残せば女流棋士転向の道も見えてくるが「まだ自分の実力は足りていないので、もっと結果を残せるようになったら考えたいです」と謙虚に自らを見つめている。
小3で将棋を始め、翌年には東海研修会へ。同い年の会員に藤井聡太三冠(19)がいた。「入ってすぐに1局だけ指させていただきましたけど、本当に強かったです。(三冠は)本当にすごいと思います」。中3で棋士養成機関「奨励会」入会。後に退会したが「奨励会はすごいところでした。集中力を継続して将棋を指すことを学びました」と現在の糧となっている。
かつての師匠は山崎隆之八段(40)。定跡より力戦を好み、サウスポーで力強く指していく姿は共通する。「憧れの存在なので、少しでも近づけたらと思います」。大学入学後も将棋一筋。自宅での研究に勤しむ日々を送っている。
女流アマ名人戦は1968年にスタートし、半世紀以上の伝統を誇るアマチュア棋戦。79年優勝の林葉直子さん、83年優勝の清水市代女流七段、2005~06年連覇の香川愛生女流四段ら、後にタイトルを獲得する女流棋士らを数多く輩出してきた。昨年は新型コロナウイルス感染拡大防止により中止されたが、2年ぶりに開催された。
(北野 新太)