【箱根への道】初Vは「現実的目標」夢見る国学院じゃいられない…前田康弘監督と歌手・相川七瀬スペシャル対談

特別対談した国学院大陸上部の前田監督と国学院大2年に在籍する歌手の相川七瀬(カメラ・頓所美代子)
特別対談した国学院大陸上部の前田監督と国学院大2年に在籍する歌手の相川七瀬(カメラ・頓所美代子)
長野・蓼科高原の女神湖畔で走り込む国学院大ランナー
長野・蓼科高原の女神湖畔で走り込む国学院大ランナー

 近年の大学駅伝界で存在感を増しつつある国学院大の前田康弘監督(43)と、国学院大神道文化学部2年に在籍する歌手の相川七瀬(46)がスペシャル対談を行った。歌手、3人の母親、大学生として精力的に活動する相川の姿勢に前田監督は感銘を受け、「箱根駅伝優勝は現実的な目標。夢見る監督じゃいられない」と箱根路制覇に意欲を示した。(取材・構成=竹内達朗、田中雄己)

 国学院大は2019年10月の出雲駅伝で学生3大駅伝通じて初優勝を飾った。20年1月の箱根駅伝ではチーム史上最高の3位と躍進。今年の箱根は9位で、チーム史上初めて3年連続でシード権をつかんだ。熱血漢の前田監督が率いて、常連校から強豪校へステップアップした。時を同じくして、20年4月に相川は45歳(当時)で国学院大の神道文化学部に進んだ。

 相川(以下相)「元々、お正月は箱根駅伝を欠かさずに見ていました。今年は特に一生懸命に“母校”をテレビの前で応援しました。本当は沿道で応援したかったけど。選手たちは長男(20歳)と同世代だから親目線でもあるし、同じ国学院大の学生だから友達目線でもあるかな。『みんな、立派だよ~』と感動しました」

 前田監督(以下前)「応援、感謝します。私は相川さんの3歳下で誕生日は1日違い。血液型も同じAB型。縁を感じます。高校、大学時代、いつも相川さんの歌を聴いていました。『夢見る少女じゃいられない』『恋心』はCDを買いましたよ」

 大阪市出身の相川はプロの歌手を志し、高校を中退して上京。織田哲郎プロデューサー(63)のもと、1995年にデビュー。今年、25周年を迎えた。

 前「歌手として大活躍しながら、なお、向上心を持って大学で勉強を続ける姿勢を尊敬します。大学進学という一歩を踏み出すことを決めた理由は何ですか」

 相「多くの人が高校生や大学生の年齢の時、私は仕事に打ち込んできました。仕事は大好きだし、後悔はありませんが、3人の子供の親になって何か足りない、と感じるようになりました。子供たちに『勉強は大事だよ。勉強しなさい』と言っても、『ママに言われたくないよ』と。確かに説得力がない、と思いました。ならば、子供たちと一緒に勉強しよう、と思ったんです。大学受験する、と言ったらびっくりされたけど、それから、私を見る目が変わった。私自身も子供たちはこんなに頑張っているんだ、と知ることができました」

 相川は猛勉強の末、高校卒業程度認定試験に合格。そして、国学院大に合格した。

 前「ウチのチームではエースの藤木宏太(4年)、佐藤駿人(2年)、椎木幹太(1年)が神道文化学部で勉強しています。相川さんは神社、神道について造詣が深いと聞いています」

 相「もともと神社が大好き。地域と連携している神社について、もっと勉強したかった。進学するなら国学院大の神道文化学部しかない、と決めていました。コロナ禍の影響でオンライン授業が多かったですが、週に1回から2回、キャンパスに行って対面で講義を受けられるようになりました。英語の講義が楽しい。クラスメートには『お父さんがファンです』とよく言われますね(笑い)」

 相川は20歳の時に「夢見る少女じゃいられない」でデビュー。いきなり、大ヒットを飛ばした。

 前「トップアーティストになるために、デビュー前の10代の頃、どんなトレーニングをしていたのか、どんな思いでいたのか。同じ年代の学生を預かる指導者として興味があります」

 相「トレーニングは一生懸命やっていました。でも、ただ、トレーニングすればいいというわけではありません。大事なことは想像力だと思います。自分には何が足りないのか、自分はどうなりたいのか。闘う相手は自分だと思っています」

 前田監督には駒大の大八木弘明監督(63)、相川には織田プロデューサーという「師匠」がいる。

 相「織田さんはオーディションで落ちた私を見つけてくれた。師匠でもあり、父でもあり、きょうだいでもあり、パートナーでもある。織田さんがいたから、やってこられました」

 前「駒大に入学して初めて会った大八木監督は怖かった。そして、熱かった。その情熱は今でも変わりません。箱根駅伝では昨年、初めて駒大に勝つことができました(国学院大3位、駒大8位)。大八木監督は『おめでとう』と大きな声で言った後、ぼそっと小さな声で『次は絶対に負けないからな』と。その言葉通り、今年の箱根駅伝では完敗しました(駒大優勝、国学院大9位)。大八木監督は常に私の目標です」

 46歳となった相川は今もパワフルなパフォーマンスを続ける。

 相「ステージはとんでもない体力が必要なので普段、5~10キロ歩いています。今日はこの神社まで、明日はあの神社まで、と神社を目標にコースを決めています」

 前「さすがですね。もし、相川さんが国学院大の選手だったら、箱根駅伝の6区を走ってもらいたい。ROCK(ロック)です。ガンガン、箱根の山を突っ走ってほしいですね(笑い)」

 駅伝ランナーと歌手。共通することもあるという。

 相「国学院大だけに限らず、どのチームの選手も多くの人の思いを背負って走っていますよね。これは歌手も同じ。支えてくれる多くのスタッフの思いを背負ってステージで歌います」

 前「相川さんの話を学生に伝えます。学生たちは今季チーム目標を箱根駅伝優勝に決めた。一昨年度は出雲駅伝で優勝したし、箱根駅伝でも3位になった。箱根駅伝優勝は夢ではなく、現実的な目標です。私も『夢見る監督じゃいられない』。相川さんに負けないように頑張ります」

 〇…対談は都内の音楽スタジオで、一定の距離を保ち、マスク着用など新型コロナウイルス感染防止対策を講じて行われ、写真撮影時に限り、マスクを外した。前田監督が箱根駅伝の5、6区の選手が着る半袖の公式ユニホームをプレゼントすると、相川は「うれしい」と喜んで着用。前田監督も「女子マネジャーみたい。かわいいです」と満面の笑みを見せた。

 ◆展望

6月の全日本大学駅伝関東選考会では危なげなく2位通過し、今季の学生3大駅伝にフル参戦する。チーム目標は「出雲駅伝3位、全日本大学駅伝5位、箱根駅伝総合優勝」。高い目標の実現に向けて、夏は新潟・妙高高原、長野・蓼科高原などで精力的に走り込んだ。

 1万メートル自己ベスト28分10秒30の藤木宏太(4年)、同28分17秒84の中西大翔(3年)がダブルエースとしてチームを引っ張る。主将の木付琳、島崎慎愛、殿地琢朗(いずれも4年)、中西大の双子の兄・唯翔(3年)ら主力も充実。さらに、ルーキーの平林清澄ら新戦力も台頭している。

 前回の箱根駅伝では藤木が1区12位、中西大が同2区15位と苦戦。国学院大のダブルエースが他校のエース格に食らいつくことが優勝争いの絶対条件となる。

 ◆前田 康弘(まえだ・やすひろ)1978年2月17日、千葉市生まれ。43歳。市船橋高では全国高校駅伝2年1区19位、3年1区37位。96年、駒大に入学。2年時に出雲駅伝、3年時に全日本大学駅伝、4年時に箱根駅伝といずれも駒大の初優勝に貢献した。箱根駅伝では2年7区3位、3年7区3位、4年4区8位。2000年に卒業し、実業団の強豪、富士通に入社。07年に国学院大コーチに転身し、09年に監督昇格。恩師の駒大・大八木弘明監督の系譜を受け継ぐ熱血指揮官。時折、男泣きの熱い涙を流す。

 ◆相川 七瀬(あいかわ・ななせ)1975年2月16日、大阪市出身。46歳。歌手を目指して高校を中退して上京。ボイストレーニングを続け、95年11月に「夢見る少女じゃいられない」でデビュー。96年10月発売の「恋心」はミリオンヒット。96年7月発売のアルバム「Red」は270万枚の大ヒットを記録した。2001年に一般男性と結婚し、現在は3人の子供(長男20歳、次男14歳、長女8歳)を持つ。18年、43歳で高校卒業程度認定試験に合格。20年、45歳で国学院大神道文化学部に合格して入学。現在、2年生。

特別対談した国学院大陸上部の前田監督と国学院大2年に在籍する歌手の相川七瀬(カメラ・頓所美代子)
長野・蓼科高原の女神湖畔で走り込む国学院大ランナー
すべての写真を見る 2枚

スポーツ

NEWS読売・報知 モバイルGIANTS 個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真 法人向け紙面・写真使用申請