藤井聡太三冠誕生に同じ三冠の渡辺明名人が独白「藤井さんといかに戦うか」

藤井三冠との対局をモチベーションにしているという渡辺明名人
藤井三冠との対局をモチベーションにしているという渡辺明名人

 藤井聡太新叡王(19)=王位、棋聖=の誕生により、将棋界で複数冠を持つ棋士は2人だけになった。時代を担う両翼となる渡辺明名人(37)=棋王、王将=は、同じ三冠に到達した藤井叡王をどのように見ているだろう。昨年度と今年度の棋聖戦で敗れている第一人者は「今いちばん考えているのは、藤井さんといかに戦うかということ。競った戦いをすることを目指したいです」と語る。天才との戦いを、今後の棋士人生での大いなるモチベーションとしている。(北野 新太)

史上最年少の19歳1か月で三冠を達成した将棋の藤井聡太新叡王(日本将棋連盟提供)
史上最年少の19歳1か月で三冠を達成した将棋の藤井聡太新叡王(日本将棋連盟提供)

 昨夏、渡辺が保持していた棋聖を奪って初タイトルを獲得した藤井はわずか1年で三冠へと躍り出た。一気に時代の頂点へと駆け上がったことを、同じ三冠である名人はどう受け止めているのだろう。

藤井三冠が塗り替えた最年少記録
藤井三冠が塗り替えた最年少記録

 「この1、2年は4強(渡辺、藤井、豊島将之竜王、永瀬拓矢王座)と言われてきましたけど、藤井さんは他の3人と比べても勝率が高いので、タイトルが増えていくのはある種、自然なことかもしれません。一時的には自分とタイトル数が並びましたけど、自分としては分が悪い(対戦成績は藤井8勝、渡辺1勝)ので、並んでいると言っても、このままでいたら一時のことになってしまうかもしれない。だから、次戦以降はより強い意識を持たないといけないですね」

 タイトル戦を重ねている藤井は今も成長し、変化していると映るのだろうか。

 「いや、去年の棋聖戦五番勝負の時から完成度は高かったので、変わっているかどうかということは本人にしか分からない領域の話だと思います。この1年で大きく変わったとは思わないですけど、勝率的にはずっと高いので安定飛行を続けている印象です」

 豊島竜王との王位戦、叡王戦をどう見てきたか。両者の対戦成績は藤井の1勝7敗で始まり、以降は藤井の7勝2敗と反転している。

 「豊島さんの方が相性がいいところからスタートしましたけど、藤井さんが克服していることはやはり気にして見ています。相性みたいなものは当人同士にしか分からないものなので…それこそ2人に聞いてみたいですね(笑)」

 過去にタイトルを獲得した棋士は45人いるが、三冠は棋史において10人しかいない特別な領域になる。

 「2つ3つとなると、スケジュール的にもキツくなってきます。だから、トップグループの30人くらいに対して、毎回いっぱいいっぱいの研究をせずとも、普通に指して勝てるくらいの力関係にならないと難しいです。自分も20代後半に二冠、三冠となる中で意識したことは羽生(善治九段)さんと互角で戦えるかどうかでした。羽生さんと互角に戦えれば、他の人には7割くらいの勝率を残せる。そうなるとタイトル戦でも有利になってくる、という基準になっていました」

 これまで名人は「若い人が勝っていくことは自然なこと」と度々発言してきたが、もちろん「自然なこと」に抗って頂点を極め続けるのは第一人者の本能でもあるだろう。

 「藤井さんに対して良い戦いが出来るかどうかということは、今いちばん考えていることですね。まずは競ったスコアにしていけるかどうか。実際にできたら『やっぱりすごいな』ってなるじゃないですか(笑い)。それが今、考えていることと目指していることです」

 以前、対藤井戦について「2度負けたら戦い方を変えていかなきゃいけない」と語っていた。今後は今までとは違う何かを求めていくことになるのか。

 「自分が今からガラッと将棋を変えることはないですけど、自分にしか分からないくらいの変化はしなきゃいけないと思います。序盤の精度を上げること、中盤での方針の立て方。将棋っていろいろな要素があるので、工夫の余地はまだまだあると思います」

 ずっと届かなかった名人位にも就き、多くの目標を達成してきた。いかにして藤井と対峙していくかは今後の棋士人生における大きなモチベーションになる。

 「もちろん藤井さんとだけ戦うわけじゃないですけど、藤井さんとどう戦うかということは、いちばん考えていることです」

 再来年度、藤井が史上最年少名人を懸けた挑戦者として、七番勝負に登場する可能性も残されている。

 「現段階で考えることじゃないですけど、来年自分が防衛できたら考え始めると思います」

 ◆渡辺 明(わたなべ・あきら)1984年4月23日、東京都葛飾区生まれ。37歳。所司和晴七段門下。94年、小4で小学生名人に。2000年、史上4人目の中学生棋士に。04年、20歳で初タイトルの竜王を奪取して以降9連覇。獲得タイトルは歴代4位の通算29期。永世竜王、永世棋王資格保持者。居飛車党。趣味は競馬、プロ野球観戦(ヤクルトファン)、欧州サッカー観戦、フットサルやカーリングをプレーすること。

藤井三冠との対局をモチベーションにしているという渡辺明名人
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