中村梅玉、襲名時から30年磨き続けた至芸の福岡貢「刀剣女子と言われる人たちにも見てほしい」

スポーツ報知
福岡貢を演じる中村梅玉(2015年10月、国立劇場提供)

 コロナ禍で歌舞伎を上演しているのは東京・歌舞伎座だけではない。10月は東京・国立劇場で中村梅玉(75)が当たり役、福岡貢を至芸で見せる「伊勢音頭恋寝刃(いせおんどこいのねたば)」(2~26日)を通し狂言で上演する。座頭を務める梅玉に公演にかける思いを聞いた。

 感染症予防で歌舞伎座は再開した昨年8月から4部制、今年1月からは3部制が続く。その都度演目も出演者、裏方も観客もすべて入れ替わる。比べて国立劇場は広い。「伊勢音頭恋寝刃」は序幕から2幕7場を通して上演される。ひとつの演目をじっくり味わえる。梅玉は「国立さんの英断と受け止めたい」と話す。

 名刀か妖刀か。刀をめぐって話は進む。見せ場は多い。伊勢神宮の御師(下級神官)の主人公・福岡貢(みつぎ)が怒りを募らせ激高していく場面。そしてまるで刀が生きているかのように次々に人が斬られていく殺傷のクライマックス。元は実話だが、展開が激しく歌舞伎の人気演目として知られる。梅玉は約30年間、「福岡貢」を練り上げてきた。

 「刀に操られるように殺していきますが、完全に操られてはいけないんです。自分の中で特に大事にしてきた役。誰に教わるわけでもなくやってきました。4代目梅玉の貢をお見せしたい。刀剣女子と言われる人たちにも見てほしいな」

 初めて演じたのは92年、4代目梅玉襲名のとき。「福岡貢」との運命的な出会いを回想する。大役の油屋お紺を7代目尾上梅幸、仲居万野を父、6代目中村歌右衛門。「貢ができると聞いたとき『やった』とうれしくてね。大尊敬する人の真ん中でお芝居をした幸福感。一生の思い出、一生の財産です」。役を深め、熟成させ、至芸と評されるまで磨き上げてきた。それが「財産」を頂戴した恩返しと信じてきた。

 時は流れ今回。梅玉は年長者で、勢いある若い世代と共演する。「僕のことを先輩と思わず、思い切ってぶつけてほしいな。若い人との共演はとても楽しみ。こうやって歌舞伎は続いていくのだと実感しますね」

 梅玉を襲名して来年30年になる。父、歌右衛門は「品を大事に」と言い続けた。「品と言われても具体的に何をどうすればいいのか分からず。いまだ試行錯誤ですよ」と苦笑する。しかし小手先の芝居に執着して器の小さな役者になるな、という意味もあっただろう。壮大なテーマである「品格」。芸に明確な答えなどない。しかし父は生涯、自問自答し続けることの大切さを息子の心に刻み込んだ。

 コロナ禍になって思うという。客席数を減らしての上演は劇場にとっても毎公演、試練だ。「でももし、この2年間まったく歌舞伎が上演されてなければ、一体どうなっていたか。制約下でもすべてを忘れて舞台に立たせてもらえるのはありがたい」。400年を超える歌舞伎の歴史。「何度も戦争や苦難を乗り越えてきた。父はよく言っていた。歌舞伎は絶対に滅びない。これほど素晴らしい文化はないのだから、と。私たちもそういう信念を持たなければ、と思っています」(内野 小百美)

【他の主な出演者(配役)】中村時蔵(仲居万野)、中村又五郎(藤浪左膳・料理人喜助)、中村扇雀(今田万次郎)、中村梅枝(油屋お紺)、中村歌昇(油屋お鹿)、中村萬太郎(奴林平)

 ◆莟玉の成長「ほめない」

 ○…一般家庭に育ちながら、梅玉の下で幼少時より修業を積み、2019年に養子となった初代中村莟玉(かんぎょく、25)は若手の中でも成長著しい。「伊勢音頭恋寝刃」では油屋お岸で共演する。梅玉は「まだまだ全然。でもあいつは舞台に出るのが楽しくて仕方ないのが伝わってくる」と言い、「翌日舞台に出たくなくなるほどけちょんけちょんに言われても、ぶつかってくるのは長所。あまり褒めたくはないんだけどね」と話した。

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