初の女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」は、12日に有観客で開幕する。2011年W杯ドイツ大会優勝、12年ロンドン五輪銀メダルや15年のフランクフルト時代に女子欧州CL制覇などを果たした三菱重工浦和のFW安藤梢(39)がスポーツ報知のインタビューに応じ、日本女子サッカーの発展への思いを語った。(取材・構成=小又 風花)
―ドイツに約7年半の在籍経験も踏まえて、プロリーグ開幕と聞いた時の心境は。
「素直にうれしかった。欧州では20代前半で庭付きの家を買ったりCMに出ていたり、女子選手の価値が急激に上がっていた。プロとして生きる選手が多い中、日本は引き離されていると感じていた。不運な時代もずっと見てきて、やっときたかという気持ち。そして、コロナ禍で大変な中でも、実現するために力を注いでくれた方への感謝の思いでいっぱいでした」
―WEリーグは“世界基準”に合わせて秋に開幕する。新リーグに期待することは何か。
「国同士が近い欧州は、多くの選手がいろんな国に移籍しやすく、一緒に強くなっている。日本も距離の壁を感じず、その中へ入っていけるといい。海外に飛び込む選手がいて、日本に戻った時には経験を還元して、海外にはWEリーグのことを知ってもらえる。相乗効果になっていくと思う。国境を気にせずに行き来できるようになってほしい」
―11年、ドイツW杯で初優勝に貢献し、日本の“黄金期”を経験した。今後の発展に必要なことは。
「W杯、五輪で日本代表がメダルを取る位置にいることは必須。W杯で優勝後に1000、2000人だったリーグ戦の観客数が、3、4万と増えた。満員のスタジアムは本当に最高で幸せ。多くの方の前でプレーしているプレッシャーが競技力の向上にもつながる。プロ化して、周りの選手の目の色が変わった。各選手、各クラブが国内タイトルを目指すのではなく、欧州CL(チャンピオンズリーグ)に出るようなクラブと対等に戦うんだという意識でできたら、全体が強化されていく」
―06年に三菱重工浦和とプロ契約し、ドイツ移籍を経て17年に復帰。39歳となった今後の目標は。
「35歳くらいの時に、37歳で引退された澤穂希さんの年齢をまず目標にしようと思った。それ以降は毎年が勝負。結果が出ない、試合に出られなくなったら、次のことを考えようかな。この一年を全力で頑張る。FWとしてゴールを決めたい。このチームを優勝に導きたいです」
◆WEリーグアラカルト
▼女性の力 日本初の女子プロサッカーリーグの名称は「Women Empowerment(女性の力)」に由来。初代チェアは岡島喜久子(63)。これまで国内最上位リーグだったなでしこリーグはアマチュアのトップリーグとして存続。
▼秋開幕 初年度参入は11クラブで、秋春制でホーム&アウェーの総当たりリーグ戦。毎節、試合のない1クラブは「理念推進日」として社会貢献活動などを行う。最終節は22年5月下旬の予定。数年は降格なし。
▼女性活躍 クラブ運営にあたる法人の役職員は50%以上を女性とする。また、託児所の確保などが参入基準に組み込まれた。
▼プロ契約 男子同様に統一契約制度(プロA~C契約に基づく)やプロ契約選手の最低年俸(270万円)などが導入された。
▼視聴方法 スポーツチャンネル「DAZN(ダゾーン)」で全試合を配信。開幕節は、DAZNの公式YouTubeチャンネルで無料配信予定。
◆安藤 梢(あんどう・こずえ)1982年7月9日、宇都宮市生まれ。39歳。筑波大在学中の2002年にさいたまレイナス(現三菱重工浦和)に加入。10年からデュイスブルク、13年にフランクフルトに移籍し、15年に女子欧州CL制覇。同年10月にエッセンに移籍。17年6月に浦和に復帰した。今年3月に母校の筑波大助教に就任。代表では99年6月に16歳でデビューし、五輪とW杯は3度ずつ出場。国際Aマッチ126試合出場19得点。165センチ、57キロ。