カタルシスたっぷりの鷹木信悟の勝利に棚橋弘至の涙…メットライフドーム2連戦で新日が見せたプロレスの底力

スポーツ報知
新型コロナウイルス感染から3週間ぶりの復帰戦でIWGP世界ヘビー級王座を防衛。観客の拍手に応える鷹木信悟(新日本プロレス提供)

 9月4、5日の両日、新日本プロレスにとって2014年以来7年ぶりとなる埼玉・メットライフドーム大会2連戦が行われた。

 フルキャパ3万3921人の会場に駆けつけた観客は4日が2095人、5日が2780人。その多くがアリーナ席に集中。スタンドには空席が目立つ寂しい大会となったが、リング上では来年、旗揚げ50周年を迎える日本最強の団体にしか生み出せない熱い戦いが展開された。

 4日のメインイベントには、IWGP USヘビー級王者の棚橋弘至(44)が登場。誤嚥性(ごえんせい)肺炎のため、2か月ぶりのリング復帰となった飯伏幸太(39)の挑戦を受け、華やかでパワフルなファイトを展開した。

 病み上がりとは思えない飯伏のコーナートップから場外への三角飛びケブラータなど、抜群の身体能力を生かした攻撃に苦しめられる場面もあったが、最後は必殺のハイフライフロー2連発で3カウント奪取。花道で座り込み、涙を浮かべて何度も頭を下げる飯伏に笑顔でうなづいて見せた。

 マイクを持つと、感染症対策で声が出せない観客に向かって「皆さんが言えない代わりに僕が言いますね。飯伏、おかえり! まだまだ夢の続きがあるぞ」と語りかけると、「イブシ、イブシ」と自ら発声して観客に飯伏への拍手を要求した。

 さらに「7年ぶりに新日本プロレスが西武ドームに帰ってきたぜ!」と絶叫。「7年前は俺、メインイベントじゃなかったんだよね。7年後にメインイベントの俺って、すげー! リングに立ち続けて、皆さんを待ってます」と叫ぶと、観客のリクエストに応え、勝利の儀式のエアギターを3連発。「ちょっとでもいいから明日が良くなりますように。愛してま~す!」と、いつもの決めゼリフでしめくくった。

 バックステージでも「まだ先になるけど、みんな、それぞれの生活、それぞれの目標に向かって頑張っていきましょうよ」とファンにエール。「何か、ちょっとしたきっかけでいいんで『ああ、棚橋、何しているかな?』と『ああ、そう言えば、プロレス好きだったな』とか思い出してもらって…」と涙声になると、「そこには棚橋がいますから。しつこいぐらい、うっとうしいぐらい、みんなを待ってますから」と声を震わせながら約束した。

 そして24時間後。さらに熱い闘いが待っていた。

 5日のメインイベントに登場したのは、新型コロナウイルス感染のため8月15日の静岡大会から欠場。3週間のブランクを経ての復帰戦が、そのまま2度目の防衛戦という大一番を迎えたIWGP世界ヘビー級王者・鷹木信悟(38)だった。

 ヒールユニット「バレットクラブ」(BC)の仲間、ディック東郷、高橋裕二郎、SHOを引き連れてリングインの挑戦者・EVILを眼光鋭く一にらみ。観客の大きな手拍子での応援を受けると、闘病の陰りの見えないパンプアップされた肉体を見せつけた。

 戦いはゴングと同時に1対BC軍4人の戦いになったが、「おい! おい! おい!」と、観客に手拍子を要求し、闘志をむき出しにした鷹木。終盤、BC総出の攻撃にグロッギー寸前になる場面もあったが、「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」(LIJ)の仲間・内藤哲也、SANADA、BUSHIの3人がリングに駆けつけ、救出。息を吹き返すと、必殺のラスト・オブ・ザ・ドラゴンで3カウント奪取。新日最高峰のベルトを死守した。

 LIJの仲間に囲まれ、まずは水を一杯飲んだ鷹木はマイクを持つと、「この3週間、いろんな意味でしんどかったよ」とポツリ。「ベルトを持ったまま無事、新日本のリングに帰ってきたぞ! まさかのコロナウイルス感染で試合するのは3週間ぶりだが、俺はプロレスラーだ。リングに上がれば病み上がりとか後遺症なんて関係ねえんだよ。今日は意地とプライドを持って、ここに上がった。今日の戦いを持って鷹木信悟、大復活だ!」と叫んだ。

 バックステージで「まさかのコロナウイルスに感染しちまってな。不安がないと言ったら、うそになるが、不安を消し去るためにやれるだけのことはやってきた。このご時世だ。決してウイルスを俺はなめてない。だが、俺は今日、プロレスラーとして意地とプライドを持って、ここに上がった」と汗まみれの顔で話した。

 前哨戦から散々苦しめられてきたBC軍の介入劇を阻止したLIJの仲間たちによる救出劇。まるで時代劇のような勧善懲悪のストーリー。鷹木の勝利の瞬間、マスク着用を義務づけられた2780人の観客たちを包んだのは心地よいカタルシス。笑顔の数々を見届けた私は、そう確信した。

 長引くコロナ禍の中、観客数を制限し、消毒、検温を徹底して興行を続けてきた新日。メットライフドーム大会2連戦も感染症対策のため、両日とも5試合に試合数を絞り、2日連続で出場した選手もオカダ・カズチカ、高橋ヒロム、ジェフ・コブ、ロビー・イーグルズの4人とのみと、ローテーション制を取らざるを得なかった。

 決して万全の状態での大会開催とは言えない。それでも、この2日間、メットライフドームを後にし、最寄り駅の西武球場前駅まで歩く約3分の道のりで私が見たのは、最高の試合を見届けたファンたちの満足げな笑顔だった。

 プロレスは、スポーツは、決してコロナなんかに負けない―。改めて、そう思わされた熱い2連戦。秋の気配が漂い始めたメットライフドームには、さわやかな風が吹いていた。(記者コラム・中村 健吾)

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