【有森裕子の本音】パラリンピックのテレビ観戦 家庭も身近な学習の場

スポーツ報知
有森裕子

 今日で閉幕するパラリンピックで、日本代表の皆さんは五輪同様、多くの活躍を見せてくれました。開幕前に今まで日常的になかなか知り得なかったパラスポーツを紹介する番組や特集が多数組まれたことで、これまで以上に注目度の高い大会になったと思います。

 そのパラリンピックで議論になったのが、障害者を理解し、共生社会について学ぶことを目的に、子供たちが大会を生観戦する「学校連携観戦プログラム」でした。新型コロナウイルスの感染拡大により是非が問われる中、私が違和感を持ったのが「現場に行かないと教育的要素がない」という意見があったことでした。

 スポーツ観戦は「リアル」が一番なのは当然です。特にパラリンピックでは、アスリートが私たちの想像もつかないような身体が持つ可能性で競技に臨むのを間近で見られ、プレー中に発せられるさまざまな音や激しさを感じ、意外性を発見できる点で重要だと思います。ただ、現在のコロナ禍において「是が非でも生観戦を」と語ることには疑問を持ちました。現場に行かずとも、現状下での学びの方法論を持ち、考えることが大切ではないかと感じました。

 例えば、家族でテレビ観戦することもあったと思いますが、同じ競技、選手を見ていても、大人と子供では観点がきっと違ったでしょう。パラスポーツに対しては大人の方が、大人ゆえに固定観念を持っていることが多いので、案外子供の率直な感性や問いかける内容には、普段考えていなかった新たな気付きが生まれたかもしれません。これは「学校連携観戦プログラム」にはない、家庭という身近な一つの社会での“学習の場”と言えるのではないでしょうか。

 そして、ここで生まれた気付きこそが、未来の社会で主役になっていく子供たちが共生社会を知り、学び、実行してゆく、大切な無形の「レガシー」になると思っています。(女子マラソン五輪メダリスト・有森裕子)

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