ソフトボール・渥美万奈が五輪を振り返る…人工芝への対応、神ゲッツー 日本リーグ後半節が4日開幕

スポーツ報知
渥美万奈

 ソフトボールの日本女子1部リーグ後半節が4日から始まる。東京五輪で2008年北京大会以来、2度目の金メダルをつかんだ日本の“守備職人”渥美万奈(トヨタ自動車)が4日までにスポーツ報知のリモート取材に応じた。攻守で活躍した五輪を振り返るとともに、リーグ戦への意気込みを語った。

 “熱狂の夏”の余韻とともにリーグ後半節が幕を開ける。渥美は初の五輪で持ち味の巧打、守備力を発揮し、金メダルに貢献した。快挙の後、インスタグラムのフォロワーは約1万人増。金メダルの反響の大きさを実感した。

 「もうびっくりです。多くの人がテレビで見てくれたんだと実感する数字になりました。五輪後、実家の両親に『ありがとう』と伝えに行った。あとはひたすらメッセージの返信をしていました」

小学生時代から憧れてきた五輪の舞台に立った。

 「初戦は緊張すると思っていたけど、意外といつも通り試合に入れました。久々に国歌斉唱した時、国際ゲームが始まるんだなという感じはありました」

 1次リーグ・メキシコ戦(3〇2)。まずはバットで存在感を示した。2―2の延長8回にサヨナラのエンドランを決めた。

 「8回表の守備で『ここを抑えたら絶対に勝負を決められる』と思って守っていた。準備ができていたし、練習通りできた。エンドランは日本が持っている技。皆さんに見てもらえて良かった」

 全試合に「9番・遊撃手」で先発出場。宇津木麗華監督(58)は1次リーグ・イタリア戦で一度、打順を組み替えたが、9番は渥美で固定した。

 「(宇津木)監督に『9番は1番につなぐのが役目だから、すごい大事』という話を聞いたことがあって。私はシングル(打)しか打てないので。だから、いかに粘って相手投手に多く球を投げさせて、あわよくば四球で出塁することを意識してやってきました」

 決勝では2打席目で気迫のヘッドスライディングを見せた。普段は冷静な渥美だが、テンションはいつもと違って高まっていたという。

 「確かにハイになっていましたね。そのきっかけが山田(恵里)さんの初回のヘッドスライディング。それを見て心が熱くなったし、勢いをもらった。この勢いに乗って打てば、いけるんじゃないか、と思いながら打席には入っていました」

 一方、守備でもエラーゼロ。堅実なプレーで見る人の多くを魅了した。大会は福島、横浜ともに人工芝の球場。堅実守備の背景には、慣れない人工芝への調整があった。

 「正直、イレギュラーしないので気持ち的には楽でした。でも人工芝は土と違って、球場によって打球のスピードが違うので、スピード感を意識してやってきたのが一つ。(大会前は)ノックばかり受けていたし、他の人が受けるノックも見ることは意識していた。あとは打球が速いのでポジショニングが大事。(山本)優さんと『このグラウンド速いですよね』と都度、確認はしていました」

 決勝のビッグプレーが日本中を魅了した。2点リードの6回1死一、二塁。3番・チデスターのライナーは山本優三塁手の腕に当たり遊撃手の渥美のもとへ。それをノーバウンドでつかむと、飛び出していた二塁走者も併殺。ピンチを救った「神ゲッツー」はツイッターでトレンド入りした。

 「あとで映像を見返して奇跡だなと思います」

 神ゲッツーは偶然とは言い切れない。2つの背景があった。1つはポジショニング。同じ所属の左腕・後藤希友が先発の上野由岐子から譲り受け、6回無死一塁で登板。1死後、相手2番に中前打を許しピンチを招いた。

 「『いつもの後藤の球じゃない』と感じた。勘じゃないけど、右打者のチデスターは振れていて後藤は引っ張られると予測した。そのためゲッツー(二塁ベース寄り)の位置ではなく定位置を守った。1、2歩の話だけど二遊間に寄っていたら、あの打球は捕れなかった」

 もう一つは体を張ってライナーを左腕に受け止めた山本。影の立役者だ。

 「やっぱり優さんが腕に当ててくれたから。打球が1センチでもズレていたら、違う所に飛んでいるので本当に奇跡。漫画みたい。その後の送球は頭を使っていなくて。あのゲッツーは全部体が反応して動いた。なので『もう一回あれをしろ』と言われても絶対に無理です」

 こうして生まれた神ゲッツーで今大会最大のピンチをしのぎ、3大会ぶりの金メダルにつなげた。ソフトボールは24年パリ五輪で実施種目から外れる。28年ロサンゼルス大会で復活するために、今後は競技の普及が課題だ。

 「ソフトボールを広げる意味で、今はSNSがさかんで、世界中で見てもらえると思う。現役中だから、とかは関係なく、何か自分ができることがあれば、活用していきたい。最近は動画をアップしてみたり。若い子たちに何か参考になって、どんどんレベルアップしてくれたらいいな」

 五輪の熱狂が冷めない中、4日に日本リーグ後半節が始まる。2位のトヨタ自動車は大和スタジアム(神奈川)で、同じく2位の豊田自動織機と対戦する。後半開幕節はテレビ朝日系列で生中継が予定されている。

 「人気が一時的だと低迷してしまうので、継続できるようにしたい。ただ、私たちができるのはグラウンドでのプレーしかない。日本代表だけではなく、五輪で戦った世界各国の代表も来日しているし、五輪でのチームメートと対戦したり、対戦相手と同じチームで戦うので、そこも見所。私自身は盛り上げていただいたのでいつも通り淡々とプレーする姿を見て欲しい。キャラ変はしません(笑い)」

 舞台をリーグに移し、“守備職人”が実りの秋を迎える。

 ◆渥美 万奈(あつみ・まな) 1989年6月15日、静岡・浜松市生まれ。32歳。6歳で競技を始め、常葉菊川高から08年に実業団・トヨタ自動車に入団。18年までに6度の日本リーグ制覇に貢献。12年に初代表入り。16年から代表の正遊撃手となり、同年、18年の世界選手権銀メダル。今季リーグではここまで守備成功率100%。右投左打。167センチ、61キロ。趣味は登山、ゴルフ。

◆日本ソフトボールリーグ

 女子は3部で構成され、日本代表のエース上野由岐子が所属するビックカメラ高崎、渥美を擁するトヨタ自動車など、1部は12チームが参加。2回戦総当たりで行い、上位5チームが決勝トーナメントに進出し、優勝チームを決める。現在、3連覇を狙うビックカメラ高崎が首位でトヨタ自動車、豊田自動織機など5チームが1差で追いかける。

スポーツ

NEWS読売・報知 モバイルGIANTS 個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真 法人向け紙面・写真使用申請