タレントのコロナ感染、どこまで公表すべき? 悩める芸能事務所

 東京の新型コロナウイルス感染者数は8月半ばのピーク時よりは落ち着いてきたとはいえ、全国的な感染拡大はまだまだ収束の気配を見せない。エンタメ界でもコロナ禍は猛威をふるっており、有名タレントの感染や公演関係者のクラスター化…など、本紙の芸能面でもタレントが感染したニュースがゼロだったことは、ほとんどない。

 先日、ある現場の取材で大手芸能事務所の関係者とあいさつを交わしたときのこと。「タレントさんは感染を公表しないといけないから大変ですね」と世間話のつもりで話題を振ると、複雑そうな表情を浮かべ、こう答えた。

 「う~ん…。実は悩ましい部分でもあるんですよ。本来なら、感染した情報というのは完全なプライバシーであって、不特定多数にお伝えするようなものではないと思うんです。ただ、スポンサーやそのタイミングで携わっている仕事など、関わる方たちがたくさんおられるなかで『公表しません』と、こちらが強く言える立場ではない」。タレントもひとりの人間であり、感染経路や容体、入院情報などがつまびらかにされることを嫌がるのは当然のこと。その折り合いをつける難しさが言葉の端々からにじんだ。

 もちろん、絶対に感染を公表しないといけないと思われるケースはある。たとえばドラマの収録中、舞台の公演中で、近い距離にある共演者やスタッフが確実にいる場合。舞台公演の場合はチケットの払い戻しなどに関わってくるし、ドラマや映画の場合は作品自体がストップする可能性もある。混乱を最小限に抑えるための公表は、リスクマネジメントとして当然のことだ。

 ただ、タレントがたまたま仕事がない空白の時期で、濃厚接触者などもいない場合、わざわざ公表するべきかという判断は芸能事務所にゆだねられるケースもある。コロナが感染拡大したこの1年半で、噂話レベルではあるが「〇〇は作品準備のための検査で陽性だったが、公表しなかったらしい」という話を数回聞いた。公表しない理由も「家族の意向」や「本人の強い希望」が多かった。我々が知らないだけで、感染を公表していないタレントもかなりいると感じた。「言わない権利」があることも、理解はできる。

 公表「すべき」「しないべき」の議論は今後も続くだろう。ただし、ネットニュースなどで陽性になったタレントの感染経路を必要以上に勘ぐったり、治療方針やワクチン接種の有無などについて批判的なコメントが続く現状があるのも事実。公表に二の足を踏むタレントが増え、逆に公表したタレントが割を食うような事態になってはいけない。感染した経験があるからこそ伝えられるメッセージもあるのだから。必要なのは、ニュースの受け手である我々がリテラシーを身につけることなのではないかと受け止めている。(記者コラム)

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