三遊亭わん丈、師匠・円丈の教えを守り落語専念 次世代のホープは「いつかは全国ツアーを…」

「人に喜んでもらうことが好きです」と語る三遊亭わん丈(カメラ・安藤 篤志)
「人に喜んでもらうことが好きです」と語る三遊亭わん丈(カメラ・安藤 篤志)
父親作成の特大扇子を横に高座を勤めるわん丈(撮影・橘 蓮二)
父親作成の特大扇子を横に高座を勤めるわん丈(撮影・橘 蓮二)

 落語家・三遊亭わん丈(38)の躍進がめざましい。二ツ目昇進から開催している隔月の独演会「わん丈ストリート」が今春から国立演芸場に進出。今秋の「博多・天神落語まつり」でも二ツ目で唯一出演することが決まった。28歳とやや遅い入門ながら、着実に地力をつけている次世代のホープが目指すものとは…。

 二ツ目に昇進して6年目。わん丈は、国立演芸場に“進出”を果たした。2016年7月にスタートした隔月開催の独演会「わん丈ストリート」。当初は定員50人の赤坂会館で始め、19年4月から204人収容の日本橋社会教育会館にステップアップ。順調に動員を増やし、今年4月からは300人キャパの国立演芸場に場所を移した。演芸関係者によれば、最速での国立演芸場進出だとされる。

 「お客さんはあんまり増えないですが、減らないイメージがあります。1回見てくださった方がまた見てくださる。ありがたいです」

 国立演芸場進出が決まり三遊亭円朝作の「怪談 牡丹燈籠」の“連続もの”に挑んでいる。「落語好きな方にも全く新しい人にも見てもらいたい。(落語)マニアは『どう料理するんだろう』と思うだろうし、初めての人もグッとのめり込めるストーリーだと思う」

 多くの登場人物や複雑な設定を分かりやすく伝えるために、大きな扇子を用意し、人物相関図を貼り出す。“飛び道具”にも思えるが、わん丈がやると嫌みにならない。現代に置き換えた説明を加え、スマートな高座で観客を引き込む。

 大事にしている言葉がある。入門当初、師匠の三遊亭円丈から言われた言葉だ。「売り込むな。お前はぼんやりしろ。落語だけやっていなさい」。自らメディアに打って出るセルフプロデュースが必要とされる世界では意外な言葉だった。当時を思い出してわん丈は言う。「(師匠から)小器用に見えたんでしょうね」

 大学時代に生活した北九州でロックバンドのボーカルとして活動。自ら売り込みラジオのDJを務めた経験もある。師匠・円丈はわん丈の振る舞いに、何かを感じ取ったのかもしれない。わん丈も師匠の教えを守った。「落語だけをストロングスタイルでやってきたのも誇りです」

 貪欲に取り組んだことで、“3大若手落語家コンクール”の「北とぴあ若手落語家競演会」で昨年、大賞を受賞。「さがみはら若手落語家選手権」では17年に準優勝、「NHK新人落語大賞」でも18年に決勝に進出するなど、実を結びつつある。また、三遊亭円楽がプロデュースする「博多・天神落語まつり」(11月3~7日)の出演も決まった。地方公演でのわん丈の落語を袖で聞いていた円楽から「うまくなったな。博多行くか?」と声をかけられ、実現。大御所、人気落語家が勢ぞろいする大イベントに、二ツ目としてただ一人出演する栄誉を得た。

 師匠の円丈は、昭和の名人・三遊亭円生の弟子であり、新作落語の第一人者でもある。わん丈は「父であり先生。古典のやり方から、新作の作り方まで全部教わりました」。稽古も厳しかった。「一番笑わない客の前でやっているようなものなので、どのお客さんの前でやっても怖くないです」

 入門志願した時、同じ志を持つ“同期”がいた。「2人のうち1人を弟子にする」という円丈の自宅に2人で通い切磋琢磨(せっさたくま)した。結局、2人とも入門が許され、兄弟子のふう丈になるのだが、入門がかなった瞬間を今でも覚えている。

 「名前をもらって、師匠の家を出るときに『お邪魔いたしました』とあいさつしたら、『今日から出て行くときは“行って参ります”と言って出て行きなさい』と言われました。ようやく、このウチの子になれたんだと感激しました」

 一般的に、二ツ目から真打ちまでは10~12年かかる。二ツ目での折り返し地点に立つ。目指すべき落語家像を聞いた。「(立川)志の輔師匠も(柳家)喬太郎師匠も好きですが、新作と古典の配分ですかね。やはり自分の師匠みたいになりたい。何をやっても品がある。うんちの噺(はなし)をしてもにおいがしない」と師匠・円丈に心酔している。

 将来の夢は、全国ツアーを開催し、各寄席でトリを務めること。「鈴本(演芸場)だったら古典で、池袋(演芸場)だったら新作で。10日間連続で続き物をやりたいし、漫談で降りたっていい。寄席のカラーに合わせる、芯のない芸人になりたい」

 「わん丈」という名前が大好きだ。命名の際、犬が横切ったため「わん丈」になったという。その時、円丈が言った。「ナンバーワンの“ワン”という意味で…」。大きな夢を抱き、一歩一歩、実現に向けて歩みを進める。(高柳 義人)

 ◆三遊亭 わん丈(さんゆうてい・わんじょう)本名・延川煕龍(のべかわ・てるたつ)1982年12月1日、滋賀県生まれ。38歳。滋賀・石山高から北九州市大に進む。11年4月に三遊亭円丈に入門。7月に初高座。12年4月に「わん丈」で前座。16年5月に二ツ目昇進。17年、第16回さがみはら若手落語家選手権・準優勝。20年、第31回北とぴあ若手落語家競演会・大賞受賞。

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