【高校野球】甲子園の試合後、オンライン会見場で起きた近江と日大東北の「小さな交流」

スポーツ報知
今夏限りで日大東北の監督を勇退した宗像忠典氏(右)

 8月29日に閉幕した夏の甲子園大会。20日(1回戦)の近江(滋賀)対日大東北(福島)の試合後、粋なサプライズがあったのを覚えていますか。勝った近江ナインから、この試合を最後に勇退する日大東北の宗像忠典監督(59)へ、ウィニングボールが贈られたのだ。指揮を執った23年間で甲子園通算7度出場へ導いた宗像氏の功績を、相手校が「試合球贈呈」という形でたたえた。

 この試合球が、どういう経緯をたどって贈られたのか? 日大東北の新チームが始動した8月28日、話を聞いた。1、2年生は練習のため、3年生は最後のミーティングのため、グラウンドにそろっていた。

 18年ぶりの甲子園に挑んだ日大東北は、近江に2―8で敗れた。試合後のオンライン会見では、日大東北の松川侑矢主将(3年)が報道陣の前でこんな話をした。「今、会見中なんですけど、近江高校さんから(日大東北の)監督さんへということでボールをいただいて。宿舎に帰ってから渡そうと思うんですけど―」。

 はじめにボールを受け取ったのは、実は松川ではなく、日大東北の奈須優翔捕手(2年)だった。オンライン取材に対応する会見場は、両チームが薄い仕切りで隔てられ、奈須は最も近江側に近い席に座っていたという。仕切り越しで隣に座っていたのが、近江の春山陽生主将(3年)。奈須は「(仕切りの)隙間から『すごく視線を感じるな…』と思ってふっと横を見たら、春山さんと目が合って。『監督さんに渡してくれ』と言われたんです」と明かした。奈須がそれを松川に伝え、前述のように松川から報道陣に伝えられた。

 オンライン会見場で起こった両校の小さな「交流」。コロナ禍で多くの制限がかかる中、短い会見時間で、近江のミッションを果たした春山主将はもちろん、視線に気づいて素早く対応した奈須も、さすが2年生ながら日大東北の正捕手だ。渡されたボールは、ゲームセット時に使われていたもの。宗像さんは「うれしいですよね、まさかの(試合球)ですから。大事にしたいです」と話し、自宅のショーケースに飾っている。

 日大東北の新チームが始動した日は、近江が智弁和歌山と準決勝を戦っていた。奈須は「いけるところまでいってほしい」と話し、松川も「優勝してほしい」と応援していた。松川は改めて「プレー以外の場所でも、高校野球は素晴らしいと感じました」と振り返った。各地では春のセンバツにつながる秋の戦いが始まっている。今日もどこかで、見えないドラマが生まれている。(東北支局・小山内 彩希)

野球

NEWS読売・報知 モバイルGIANTS 個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真 法人向け紙面・写真使用申請