初の実在人物がモデルの作品だからこそ生まれた「風立ちぬ」の”ごちゃ混ぜセリフ”

スポーツ報知
堀辰雄と堀越二郎氏をモデルにした「風立ちぬ」の堀越二郎(C)2013 Studio Ghibli・NDHDMTK

 27日の金曜ロードショー(後9時)は、3週連続となるスタジオジブリ作品放送のラストとなる「風立ちぬ」(2013年)。零戦の設計者として知られる堀越二郎氏の人生に、作家・堀辰雄を重ね合わせた主人公と、その恋を描いた。

 宮崎駿監督が2009年から模型雑誌「月刊モデルグラフィックス」に連載した同タイトルの漫画が原作。宮崎監督にとって、実在の人物をモデルにした作品は初めてとなる。それによって生まれたのが、日本語と外国語の”ごちゃ混ぜセリフ”だ。

 過去の作品では、舞台が外国と思われるものもあるし、異なる国の人物と思われるキャラクターが会話を交わすシーンも存在する。ただ、あくまでも物語は「とある時代の、とある国の出来事」。それゆえ、登場人物全員が日本語を話していていても違和感は全くない。

 そんな中、本作では主人公の二郎がドイツに留学した際に、訪問先のユンカース社で勝手に工場内をウロウロしていて現地社員にたしなめられるシーンなどで、ドイツ語と日本語が混在する。ただ、そのシーンではドイツ語で何を言っているかは一切説明されていない。

 これについて、宮崎監督は「全部ドイツ語だと分からなくなるので、(字幕)スーパーを出さないといけなくなる。でも、スーパーは出したくなかったんです。だから、ドイツ人もドイツ語をしゃべったり、日本語をしゃべったりする。『日本人は日本に帰れ』という言葉も、ドイツ語で言っても日本語で言ってもそのニュアンスは何となく分かるだろうと。分からない人には分からないだろうと覚悟してやるしかないですね」と話している。この考え方こそが、宮崎監督のアニメの表現とリアリティーに対する考え方が表れていると思う。

 私事だが、海外の実写映画を見る際に基本的には字幕版で見るが、アニメ作品に限ってはあえて吹き替え版を選ぶことにしている。それは、実写以上にアニメでは字幕がスクリーン上で気になってしまうから。実写の場合は演じている俳優の声を楽しみたい気持ちはあるが、アニメではそれよりもなるべく目に入ってくる「違和感」を取り除きたいという気持ちが勝るのだ。

 今作では、やりとりを全てドイツ語にしてしまったら、その訳を文字として画面上に入れなければいけない。でも、宮崎監督にはそれが許せなかったのだと思う。その”解決策”として生まれたのが日本語とドイツ語を混ぜたセリフのやりとりだったのではないだろうか。

 ちなみに、本作のキャッチコピーは「生きねば。」。2週前に放送された「もののけ姫」のコピーは「生きろ。」だった。そして現在、宮崎監督が製作中の最新作のタイトルは「君たちはどう生きるか」。常に「生」を描き続けて来た宮崎監督が、2013年の時点で「生きる」ことをどう考えていたかを感じながら本作を見てみるのもいいだろう。(高柳 哲人)

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