◆第103回全国高校野球選手権大会第12日 ▽3回戦 智弁学園7―1日本航空(25日・甲子園)
優勝候補の智弁学園(奈良)は、今秋ドラフト候補・前川右京左翼手(3年)の2試合連続アーチなどで日本航空(山梨)に快勝。甲子園2発でOBの巨人・岡本和真に肩を並べ、26日の準々決勝では先輩が14年夏に敗れた明徳義塾(高知)に挑む。8強が出そろったが、関東勢が40年ぶりに8強入りを逃した一方で、近畿勢が大会史上初めて5校も8強入りした。
浜風をものともせず、深い右中間へ放り込んだ。「何としても打ちたかった」。9回1死一塁、智弁学園の前川が2試合連続の2ラン。8強を決定づける一発で、甲子園での本塁打数でOBの岡本和(巨人)に並んだ。
左腕の外角変化球に対応できず、4打席目まで2四球2三振。ベンチで岡島光星に助言を求めると、「インパクトの時に力を抜いて楽にいけ」。「それで心を落ち着かせたら打てた」と、左腕のやや外寄り変化球を捉えた。津田学園(三重)で19年に春夏連続で甲子園に出場した2学年上の兄・夏輝さんもスタンドで観戦。激励も力に高校通算37号を放った。
中学生の頃、兄から体を大きくするよう忠告されたが、「細くてもいいや」と2年時は聞き流していた。3年の夏が終わると「通用しない」と途端に危機感を覚えた。助言に従い、入学までに体重を63キロから一気に約80キロへ増量。打席で強く振ることをアドバイスされ、振り込みの回数も増やした。兄の指導もあり、1年夏の甲子園で名門の4番を務め、世代屈指の好打者に成長した。
“左の岡本”の能力について、小坂将商監督(44)は「ボールをつぶすという部分では(岡本和より)優れている」と評価。視察したロッテ・三家スカウトも「吉田正尚(オリックス)のようなスケールの打者になってくれたら」と金メダルに輝いた侍ジャパンの主力打者になぞらえた。
春夏通算40勝目で、10年ぶり8強入り。姉妹校の智弁和歌山と初めて準々決勝そろい踏みだ。次戦の相手は、14年夏の1回戦で岡本和を擁して敗れた明徳義塾。「(相手を)つぶしにいくという気持ち」と前川。先輩の雪辱を果たし、初の頂点へ加速する。(水納 愛美)
◆前川 右京(まえがわ・うきょう)2003年5月18日、三重・津市生まれ。18歳。白塚小1年から「白塚バッファローズ」でソフトボールを始める。一身田中ではボーイズリーグの「津ボーイズ」でプレー。3年時に全国大会出場。177センチ、90キロ。左投左打。