陸上男子110メートル障害 金井大旺を支えた母の愛

スポーツ報知
レース中に転倒し、2組8着で準決勝敗退となった金井

 東京五輪陸上男子110メートル障害準決勝(8月4日、国立競技場)、金井大旺選手(25)=ミズノ=のレースを、同選手の故郷、函館市の千代台陸上競技場で見た。金井が小、中学に所属したCRS(千代台陸上スクール)後輩らのテレビ観戦を取材するためだ。同種目日本人初のファイナリスト誕生を期待した約80人の子供たちから、スタートと同時に大きな拍手がわき起こったが、8台目をクリア後に、まさかの転倒。マスク越しの悲鳴が響いた。再び走り出し、フィニッシュすると、大きな拍手がわき起こった。

 初五輪の走りを見届けながら、私も過去の取材を思い起こした。初めて金井を知ったのは、函館ラサール高2年の全道高校大会(2012年)。思い切りいい走りで初優勝を飾ったが、レース後の取材では、物静かな口調が印象に残った。道内屈指の進学校で専門指導者もいない中、独自に研究しながら取り組む姿勢にも感銘した。この年の高校総体では7位。初優勝にかけた翌年の高校総体も取材したが、下級生に敗れ5位に終わり、悔し涙を見せた。そこで生じた雪辱への思いが、五輪代表への原点となった。東京五輪前に「準決勝にピークを合わせ最高の走りをしたい」と話していただけに、転倒は全エネルギーを集中、勝負をかけた結果だったと感じた。

 五輪代表実現には、母・道子さん(56)のサポートも大きかった。母への取材からも、息子への“愛”を感じた。小中学時代は、金井に頼まれ、練習、試合の「ビデオ係」を担当。客席のない地方での大会ではカメラ片手に木、鉄塔によじ登って、見渡せる高さから走りを追い続けたという。

 高校卒業時、歯科医師の家業を継ぐため医療系大学へ進む道もあったが、最後の高校総体敗退で、陸上の強豪大学へ進むか悩んでいた時も「人生は一度だけ。悔いが残らない道を進みなさい」と法大進学を後押しした。

 金井は昨年から鶏肉ささみ、野菜中心の食事など厳しい自己管理を実施。母へのメールで「たまにハンバーグやポテトフライが食べたい」と漏らした時もあったそうだが、その時は「思い切って食べて、また頑張れば。オンとオフをつけたらいい」と助言。金井もリフレッシュできたという。

 目標の五輪ファイナリストは叶わなかったが、多くのサポート、応援を受けながら悲願の五輪トラックを疾走した25歳の道産子ハードラー。不屈の挑戦心で、今後目指す歯科医師の夢も実現してほしい。(北海道支局・小林 聖孝)

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