囲碁の第40期女流本因坊戦挑戦者決定戦・小山栄美(てるみ)六段(51)対星合(ほしあい)志保三段(24)戦が23日、東京都千代田区の日本棋院で行われ、星合三段が217手で黒番中押し勝ちし、藤沢里菜女流本因坊(22)への挑戦権を獲得した。
初のタイトル挑戦を決めた直後、感想を聞かれた星合は「ちょっと待って下さい…」と数秒間だけ沈黙。そして「本当にビックリというか、ちょっと不思議な感じもあります」と語った。「せっかくタイトル戦に出られるので、しっかり準備して臨みたいです。女流の枠を超えて大活躍している藤沢さんと最低でも3局打てるのは幸せなこと。一生懸命に準備して、精一杯の力を出せたらなと思います」
2013年に入段(プロデビュー)。現在、NHK杯の司会を務めており、YouTubeチャンネルでの動画配信やイベントへの出演など普及面での活躍が知られてきたが、今回初めて棋士として晴れ舞台に立つことになった。親友でもある藤沢との五番勝負は9月28日に岩手県花巻市で開幕する。
感想戦終了後、取材での質疑応答は以下の通り。
―初めて挑戦権を獲得した。
「率直にとてもうれしいです。…自分のことをしゃべるのは比率として少なかったので、たどたどしいかもしれません(笑)。今の女流棋士はどの世代もむちゃくちゃ強くて勝ち上がるのは大変なので、光栄というか…うれしいです。まだ実感は沸いていなくて、本当にあの舞台に立てるのかなぁと思っています」
―大一番でした。
「正直、夢にも出てきました。恥ずかしい話なんですけど、2週間くらい前から『あ、もうドキドキしてる』ってなってました(笑)。意識しないようにして、結果的に意識していました」
―藤沢女流本因坊とは親友で、2014年の藤沢さんの就位式で星合さんが花束贈呈するサプライズをした時、主役が涙したこともありましたよね。
「泣かせたんですけど、彼女は認めないんです。(恩師である)洪(清泉四段)先生の祝辞で泣いたんだって(笑)。今でも鮮明に覚えています。あの時も、自分もタイトル戦に出られるような棋士になりたいと思いましたけど、なれない時間がずっと長くて…」
―では、今度は盤上で泣かせる。
「すごい言葉ですね(笑)。里菜ちゃんは強さに磨きを掛けていて、そんなに勝たせてもらえる相手ではないので…。泣かされないように頑張ります(笑)。仲も良いですけど、棋士としても人としても素晴らしくて、リスペクトの思いは絶えません。五番勝負で何度も盤を挟めるのは、本当に幸せなことです」
―普及面だけでなく、プレーヤーとしての活躍をずっと願って戦ってきた。
「いや、何度も諦めかけました。ずっとタイトル戦に出られなくて、里菜ちゃんのタイトル戦を解説の聞き手として見ることも多くあったので。思うように勝てない時は『自分はもうそちら側には行けないのかな』と思ってしまうこともありました」
―つなぎ止めたものはなんだったのでしょう。
「自分は気持ちが落ちてしまうタイプなので、数え切れないくらい諦めそうになることはありました。でも、ちょっとずつギリギリのところで気持ちをつなぎ止めてきた。何が…というのは分からないですけど。今年は以前より意識が改革されて、囲碁に向かう姿勢、対局に向かう姿勢は変わってきたと思います」