◆第57回札幌記念・G2(8月22日・札幌・芝2000メートル、良)
真夏のスーパーG2、札幌記念(22日、札幌)は、白毛の3歳牝馬ソダシ(吉田隼)が横綱相撲で初めて対戦する古馬を撃破した。オークス(8着)で初めて黒星を喫したアイドルホースが、デビューから2連勝を飾った北海道で見事な復活V。今後の視野に入る牝馬3冠最終戦、秋華賞(10月17日、阪神)へのステップを最高の形で通過した。
厚い信頼を手綱に乗せた。向こう正面。2番手を進む吉田隼とソダシの外からブラストワンピースがまくり気味に位置を上げると、押し出されるように先頭に立ったが、人馬のリズムは全く乱れない。直線でブラストを突き放した後は、ラヴズオンリーユーとペルシアンナイトの強襲。しかし、右ステッキを入れた鞍上が全身で手綱を押すと、白い馬体はさらに力強い走りへと変わった。
ゴール板を先頭で駆け抜けた直後、吉田隼は左手を握りしめた。初の敗戦となったオークス(8着)以来の実戦。「一番にホッとしました。折り合いもついていましたし、いつでも動けるぞというのが手綱からも伝わっていました」と率直に感触を伝えた。
昨夏に新馬、札幌2歳Sと連勝した北の大地に戻ってきたアイドルホースの華麗な復活劇に、スタンドは大きな拍手に包まれた。須貝調教師も「競馬を知らない人でもソダシが白い馬だと知っている。重圧ですけど、皆さんに感謝しています」と口にする。
大きな意味のある勝利だった。レース前に須貝師はこう口にしていた。「もう一度、2000メートルという距離での走りを見てみたいんだ」。クロフネ産駒はJRA平地重賞40勝すべてが1800メートル以下。白毛の女王には「距離の壁」という話題がつきまとった。その不安を振り払うような初の古馬相手での圧勝。「ソダシがやってくれました。新たな伝説として、その辺は喜んでいます」とトレーナーはうなずく。
次走は状態を見てからだが、同じ距離で行われる秋華賞の視界が一気に開けたことは確かだ。「復帰戦でソダシらしい競馬をしてくれました。秋に向けて、いい競馬だったと思います」と吉田隼は満足した表情を浮かべた。再び頂点の座、そして2冠女王へ―。原点の地で大きな一歩を踏み出した。(山本 武志)
◆ソダシ 父クロフネ、母ブチコ(父キングカメハメハ)。北海道安平町・ノーザンファームの生産。栗東・須貝尚介厩舎の牝3歳。通算7戦6勝。主な勝ち鞍は20年阪神JF、21年桜花賞(ともにG1)、20年札幌2歳S、アルテミスS(ともにG3)。総収得賞金は3億3714万2000円。馬主は金子真人ホールディングス(株)。