「検証・東京2020」自国開催で触れた「顔」の覚悟…レガシーはあきらめない姿勢          

スポーツ報知
松山英樹

 閉幕した東京五輪を記者コラムでテーマ別に検証してきた「検証・東京2020」。最終回は、それぞれの「競技の顔」だった選手の戦いを高木恵五輪担当キャップが振り返る。

 日本が過去最多58個のメダルを獲得した大会は、「競技の顔」の奮闘に心を打たれた17日間でもあった。アスリートを取材するなかで、身震いするほどの覚悟に触れる瞬間がある。そのために取材を続けているといってもいい。自国開催での五輪は、そういった機会に恵まれることも多かった。

 男子ゴルフで4位に入った松山英樹の第3ラウンドだった。15番でティーショットを打ち終え歩き出すと、汗にまみれた帽子を取った。手にしていたペットボトルのキャップを外すと足を止めることなく水をかぶり、ブルブルッと頭を振った。

 マラソンやサッカーではよく目にするシーンだが、ゴルフでは非常に珍しい。とにかく、それほどに真夏の霞ケ関CCは暑かった。これが新型コロナウイルス感染からの復帰戦とは酷すぎる。12番で1メートルのバーディーパットを外した。ミンミンとセミの鳴き声だけが響く静寂のなか、松山の集中のオーラがゆがんだように見えた。心身の限界か…と勝手に想像した。

 しかし、あきらめなかった。水をかぶってまで食らいつこうとした。前回のリオ五輪は辞退した。自国開催への思いは強かった。「暑いのは皆一緒。体力的にまだ戻りきっていないので、しんどい部分はあったが、そんなのは言い訳。しっかりと良い位置で終わろうと思って最後までやり切った」。強い選手だ。1打差2位まで追い上げて最終日を迎えるのだから。

 テニスの錦織圭もたくましかった。単複両方に出場し、連日炎天下で熱戦を繰り広げた。「五輪だから。グランドスラムでは絶対出ないと思う。楽ではない。五輪なので、っていうところでがんばれている」。持てる力を振り絞ろうとする姿は強く印象に残った。無観客については「集中すればいいだけのこと」としながらも「ホームの意味っていうところでいえば、ちょっと寂しい。子供たちに生で見せられないのが…」。未来のプロ選手たちへの思いが、垣間見えた。

 ソフトボールの上野由岐子が米国との決勝、7回のマウンドに向かう背中がとてつもなく格好良かった。宇津木麗華監督の「上野しかいない」に応えたエース。長年ソフトボール界を背負ってきた39歳は「若い選手の育成も含め、さらにソフトボール界が盛り上がっていけるように尽力したい」。やはり“これから”を口にした。

 「こうなりたい」と子供たちが憧れる選手たちの闘う姿は、たくさんの感情を残してくれた。13年ぶりの金メダルを手にした上野は「あきらめなければ夢はかなう」と言った。東京五輪での一番のレガシーは、アスリートのあきらめない姿勢にあったのではないだろうか。(高木 恵)=終わり=

 ◆高木 恵(たかぎ・めぐみ)北海道・士別市出身。ゴルフ担当を経て、2015年から五輪キャップ。東京大会は担当の柔道とレスリングの他、ソフトボール、フェンシング、バスケットボール、テニス、ゴルフを取材。「鬼滅の刃」フリークで、大会中はLiSAの「炎」を聴いて“心を燃やした”。

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