京都で最古の歴史を持つ神社の一つとされる上賀茂神社には、G1馬の子の白馬が神馬(しんめ)として奉仕している。一般には、京都三大祭りの一つ、賀茂祭(通称・葵祭)で有名な世界遺産だ。
今年6月、10年ぶりに交代した現在の神馬「神山号7世」は、04年の桜花賞など日米の重賞を制したダンスインザムードの子。13~15年に美浦・藤沢和厩舎で2勝を挙げた芦毛馬マンインザムーン(セン11歳、父チチカステナンゴ)だ。「お仕事は参拝客をお迎えすること。実際に生きた神馬が奉納されている神社は全国でも10社ほどです」と権禰宜(ごんねぎ)の中野瑞己さん。毎週末には神馬舎に出社し、参拝客のフォトスポットとして人気を博す。
例年5月5日には「賀茂競馬(かもくらべうま)」も行われる。左方(さかた)、右方(うかた)に分かれた馬が2頭ずつ5番勝負(計10頭)で競走し、左方が勝てばその年の国が実り、豊かになるとされる。平安時代、五穀豊穣(ほうじょう)、天下泰平の祈願のため宮中で行われていた競馬会を移したのが始まりで、中野さんは「970年以上の歴史があり、本来は天皇陛下がご覧になられるものでした」と説明する。
賀茂競馬は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、2年連続で馬が走れていない。「毎朝お供えをして(コロナの)終息を祈願しています」と中野さん。神馬が奉ずる数少ない神社も、世界に一日も早く平穏が戻ることを願っている。(松浦 拓馬)
◆上賀茂神社 正式名は、賀茂別雷神社(かもわけいかづちじんじゃ)。ユネスコの世界文化遺産「古都京都の文化財」の一つ。境内には本殿など国宝2棟、重要文化財41棟がある。京都市北区上賀茂本山339。