【夏競馬の名場面】負けが「勝因」 2005年ヘヴンリーロマンスの札幌記念

スポーツ報知
ヘヴンリーロマンスが勝った札幌記念を伝える2005年8月22日付のスポーツ報知大阪版の紙面

 2年前の甲子園、履正社VS星稜の決勝がテレビから流れてきた。コロナ、コロナと騒ぎ出した5か月前の出来事である。空席を探すのに苦労したであろうスタンドに懐かしさを感じてしまう。

 一寸先は闇である。ただ、どこかに光があるのではないか。現在もトレーナーとして活躍する河内洋さんが、20年前にJRAのCMで「おれなんか、1万回以上負けてるんや」と、新人騎手にふんするナインティナイン・岡村を励ますシーンがあった。そうなのである。1レースに勝利者は1頭(騎手)であり、敗戦の中から関係者は次へつながる光を懸命に探している。

 16年前の2005年、中央競馬は無敗の3冠にひた走るディープインパクト一色だった。そんななか、夏の札幌で紅(あか)い炎が静かに点火していた。それは敗戦から始まっていた。8月21日の札幌記念。ヘヴンリーロマンスが鮮やかな勝利を収める。前週のクイーンS(2着)から連闘策での重賞制覇だった。

 期待のサンデーサイレンス産駒として2002年11月30日に阪神でデビューしたが、翌03年に牝馬3冠に輝くスティルインラブから1秒遅れの6着。結局クラシックロードに乗れず、現在で言う3勝クラスを勝ち上がったのは04年5月と、時間がかかった。その後、暮れの阪神牝馬Sで初の重賞タイトルを手にしたが、年明けから6、11、10、10着と試行錯誤していた。

 真夏のクイーンSで転機が訪れた。「放牧に出てから本当に状態がよくなりましたね」。コンビを組んだ松永幹夫騎手(現調教師)は手応えをつかんでいた。10番人気と低評価だったが、レクレドールと大接戦の2着。わずか鼻差。悔しい敗戦である。ただ、負けたことで陣営は決断した。翌週の札幌記念に登録。連闘策を挑んできた。

 9番人気と相変わらず伏兵の域は出なかったが、馬群から鮮やかに抜け出して、ファストタテヤマの強襲をかわす。今度はわずか頭差で勝利。ファストタテヤマが12番人気、3着コイントスが13番人気で、導入されて2年目の3連単は275万9500円の重賞最高配当(当時)となった。

 管理していた山本正司調教師は笑いが止まらなかった。「出来は良かったが、まさか勝つとは思わなかった。先週、勝っていたら使っていなかった」。そう、クイーンSの鼻差負けが「勝因」だった。それだけで終わらなかった。札幌記念から2か月後、天覧競馬となった天皇賞・秋で激走V、歴史に残るミキオの最敬礼につながった。

(編集委員・吉田 哲也)

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