リレー侍のバトンが届かなかった要因…練習で失敗がなかった20センチ延長の「攻め」…苅部俊二氏が分析

スポーツ報知
第1走者の多田修平(右)と第2走者の山県亮太がバトン受け渡し失敗。何度も空振りした

 東京五輪の陸上男子400メートルリレー決勝(6日、国立競技場)で、悲願の金メダルを狙った日本(多田修平―山県亮太―桐生祥秀―小池祐貴)は多田と山県の間でバトンが渡らず、途中棄権に終わった。16年リオ五輪を現場指揮し、過去最高の銀メダルに導いた苅部俊二氏(52)=法大監督=がスポーツ報知のインタビューに応じ、頂点へ貫いた「攻めのバトン」の背景を分析した。(取材・構成=細野 友司)

 山県、桐生、小池の9秒台トリオを擁した歴代最速チーム。決勝へ進んだ以上、「金か、失格か」(土江寛裕コーチ)の大勝負に出るのは自然な決断だった。

 「僕が現場にいたとしても絶対攻めます。予選を全体8番のタイム(38秒16)で通過したから、攻めないと金はない。ギリギリの真剣勝負。金かゼロかの勝負を貫いたという意味で、やはり“侍”でしたね」

 「攻める」とは―。バトンパスでは、各走者が走り出す目安の粘着テープを走路に貼り、前走者が通過したのを見計らって走り出す。この距離は各選手が自分の足の長さ(足長)で何足分、とあらかじめ決めておく。足長を伸ばせば互いがスピードに乗った状態で渡すため、リスクがある一方でタイム短縮が期待できる。今回、多田と山県の間は予選から決勝で0・7足分、長さにして約20センチ伸ばした。

 「元々練習でもやっていて、失敗したことがない距離だったようです。ただ、決勝はカーブがゆるく、走りやすい9レーン。多田君は良い走りで、山県君はほんの少し出るのが早いように見えました。山県君の走る位置も、本来レーンの左側の方がもらいやすいが、真ん中になっていた。失敗にはさまざまな要因が重なっています。タラレバはありませんが、序盤の走りを見れば、バトンが渡っていたら上位でかなり良い争いができたと思う。首脳陣が想定した優勝タイム37秒50の読みも正しかった」

 リオ五輪決勝(山県―飯塚翔太―桐生―ケンブリッジ飛鳥)も、予選から決勝でもちろん「攻めて」いた。

 「ボルトのジャマイカのように、走力だけで勝てればいいですけど、そうではない。普通にやれば3~4番だったから攻めました。1→2、2→3の区間が4分の1足長。約7センチですね。選手は半足(約14センチ)伸ばせるということでしたが、少し慎重にした部分もあった。桐生君とケンブリッジ君のところは予選で詰まったので、半足か、もう少し伸ばしたと思います」

 7センチ伸ばしたリオは銀メダルに輝き、20センチ伸ばした東京は無念を味わった。わずか十数センチの差が明暗を分ける厳しい世界―。ただ一つ、間違いないのは、東京五輪決勝の舞台に立ったのは、頂点を狙える速さを備えた4人だったということだ。

 「9秒台の選手がそろい、金メダルを目指せるチームだと思います。結果は受け止めないといけないが、悲観することはない。22年ユージン世陸、24年パリ五輪に向けて、次につなげていってほしいですね」

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