繰り返される新日本プロレスの乱入劇に高まるファンの不満…横浜武道館に響いた抗議の足踏みへの答えとは

スポーツ報知
10日の横浜武道館大会で乱入してきたEVILに技をかけようとした際、ディック東郷に後ろから金的攻撃を受けた鷹木信悟(新日本プロレス提供)

 各地で猛暑日となった8月10日。横浜市の新たな格闘技の殿堂となりつつある横浜武道館に観客の抗議の足踏みが響いた。

 午後6時から行われた新日本プロレス「SUMMER STRUGGLE 2021」大会。新型コロナウイルスの感染症対策として、最大収容人員3000人の会場に観客は759人。全員が入場時の消毒、検温を徹底した上で客席の間隔を空け、マスク姿で、じっと試合を見守った。

 そんな熱心なファンたちが一斉に抗議の足踏みをする瞬間があった。

 セミファイナルで行われたIWGP世界ヘビー級王者・鷹木信悟(38)と高橋裕二郎(40)のシングルマッチ。観客が期待したのは「ハツラツおじさん」として、この夏の新日マットをリードする鷹木の全力ファイト。7月25日の東京ドーム大会では棚橋弘至(44)を撃破し、新日最高峰のベルトを初防衛。そのパワー満点の闘いぶりは「ベストバウト製造マシーン」として、プロレス界の評価もうなぎ登りとなっている。

 9月5日、埼玉・メットライフドーム大会で行われる2度目の防衛戦でヒールユニット「バレットクラブ」(BC)のEVILの挑戦を受ける鷹木にとって、BCの番頭格・裕二郎との戦いは絶対に落とせない一戦。それだけに序盤からパワー抜群の攻めを見せつけた。

 乱入、凶器攻撃なんでもありのダーティーな戦いぶりで知られるBCを黙らせる意味合いも持つ闘いで鷹木はゴング前の急襲こそ許したが、強烈なエルボーと頭突き、キックを食らわすと、「さあ、行こうかー!」と観客をあおった。

 場外乱闘で苦しむ場面もあったが、顔面への屈辱的な蹴りを食らうと、一気にヒートアップ。裕二郎の得意技・手へのかみつきをやり返すと、声を出しての応援の禁じられた観客の手拍子とともに左右のエルボーを乱打した。

 熨斗紙、スライディングラリアットと畳みかけたところでEVILと、そのセコンド役のディック東郷(51)がリングに乱入も、両腕のラリアットで2人まとめて粉砕。裕二郎を必殺のラスト・オブ・ザ・ドラゴンで叩きつけ、3カウントを奪おうとしたところでEVILが再びリングへ。これをKOしようとしたところで東郷が背後から金的攻撃。悶絶する鷹木の姿にレフェリーが裕二郎の反則負けを宣告した。

 試合後も奪い取ったIWGP世界ヘビーのベルトで鷹木を殴打したEVILと東郷。倒れ伏した、その頭を踏みつける暴挙に観客たちは会場の床を踏み鳴らす足踏みで猛抗議した。

 大きなダメージを受けた鷹木はバックステージで座り込むと、「あいつら、本当にどうしようもねえな! ふざけんなよ、EVIL! チャンピオンでもねえのに汚い手でベルト触ってんじゃねえぞ、コノヤロー。絶対、許さねえからな!」と、怒りをあらわに。一方、EVILは「いいか、鷹木。おまえが裕二郎から(カウント)3つ獲るなんてよ、100年早えんだよ。いいか。てめえは0点だ。よく覚えとけ!」と、なぜか勝ち誇ったように言い切った。

 EVILは7・25東京ドームでもベルトを死守した直後の鷹木を急襲。EVIL(変型大外刈り)で失神KOしていただけに横浜でも繰り返された乱入劇に私も既視感たっぷり。正直「またか」と思ってしまった。

 同時にアリーナ席の片隅に記者席が設けられていたため、EVILと東郷の乱入の瞬間に観客たちがついたマスクの奥のため息も確かに聞こえてきた。

 だからこそ、試合後の観客たちの静かな怒りも伝えようと、「鷹木信悟、高橋裕二郎に反則勝ちも乱入・EVILに激怒『絶対、許さねえからな!』」と題した速報をアップした。この記事には、配信直後から多くのファンからのEVILらの乱入劇への怒りのコメントが集まった。

 「EVILの乱入は飽きました。観客を無視し過ぎると、新日自体がヤバくなるのでは?」

 「鷹木との一騎打ちまでEVILの乱入は続くのでしょうが、高いお金を払って、それを見せられるファンはたまったもんじゃないし、もう、とっくに飽き飽きしている」

 「新日はこのコロナ禍で大勢のファンを失った。コロナ禍でスカッとする爽快感を求めているファンに対して、この1年間、乱入、代わり映えのしないマッチメイク、グダグダなタイトルマッチで迷走期間に突入している」

 批判の声が8割以上。中には「会場に行きたいと思わせないための新日流のコロナ対策だよね?」という皮肉たっぷりの声まで届いた。

 新日にも同情すべき点が数多くある。5月の福岡どんたく大会後には9選手が新型コロナに感染。初代IWGP世界王者でエース格の飯伏幸太(39)は誤嚥性(ごえんせい)肺炎のため、7月上旬から欠場。その飯伏を破り、5月にIWGP世界ヘビー級王者となったエース外国人・ウィル・オスプレイ(28)も鷹木との防衛戦で首に負った負傷のため、英国に帰国したままだ。

 2度と団体内クラスターを繰り返さないため、対戦カードも基本的にターンオーバー制を採用。横浜武道館大会でもポスターに登場していたオカダ・カズチカ(33)、棚橋らエース級選手が出場しなかった。

 この6年間、ずっと新日の試合を追いかけてきた私は昨年の神宮球場大会で内藤哲也(39)に敗れるまで旧タイトルのIWGPヘビーとインターコンチネンタルの2冠王だったEVILが、どれだけ素質にあふれたパワフルなプロレスラーなのかを知っている。だからこそ、今のヒール的立ち居振る舞いがもったいなくて、しようがない。

 さらに言えば、大の新日ファンの立場からスタートし、勝利の後は必ず「お客様」に感謝を捧げ、ほぼ皆勤出場を続ける内藤のようなトップレスラーがいることもまた知っている。

 日本最大、最強のプロレス団体・新日がどれだけ人材の宝庫か、そして感染症対策を施しながら、どれだけ懸命に各大会を運営しているかも知っている。

 それだけにコロナ禍に見舞われたこの1年半の興行がどこか刹那的なマッチメイク、乱入などの安易な刺激策に流れているような気がしてならないのが残念だ。

 一記者として新日にお願いしたいことは一つだけ。すべてのファンをワクワクさせ、会場に足を運ばせた、あのストロングスタイルの熱さをマッチメイクにしろ、リング上の闘いにしろ、もう一度、取り戻してほしい。それだけだ。

 猛暑の夜、横浜武道館で体を震わせたファンの抗議の足踏みだけは、もう聞きたくないから。(記者コラム・中村 健吾)

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