寺島しのぶ、女優人生30年で初めての山田組を振り返る 「キネマの神様」で沢田研二と親子役

「キネマの神様」での(左から)沢田研二、寺島しのぶ、宮本信子(C)2021「キネマの神様」製作委員会∥松竹
「キネマの神様」での(左から)沢田研二、寺島しのぶ、宮本信子(C)2021「キネマの神様」製作委員会∥松竹

 寺島しのぶが、公開中の映画「キネマの神様」で、晩年の主人公・ゴウ(沢田研二)の娘・歩を演じている。30年の女優人生で山田洋次監督作品への出演は初めてだ。

 「役者はキャスティングされない限り、監督を選ぶことはできない。私は(山田組と)あまり縁がないのかな」と思っていたという。寺島演じる円山歩は難しい役だ。ゴウは若いころ、映画監督として将来を期待されたが、ある理由で挫折。失意は大きく、癒えぬまま年月は過ぎ、年齢を重ねていた。

 ゴウは、ギャンブルで膨らんだ借金で家族に迷惑を掛け続ける。妻・淑子(宮本信子)も娘も、やるせない気持ちを抱え、ゴウに振り回されて暮らしている。ゴウがこんな生き方をする背景に若き日のダメージが起因していることも、家族は理解している。そして映画を愛する気持ちだけは、何があっても変わらないことも。

 「歩を演じる上で山田監督は家族だからこそ厳しく向き会えるんじゃないか、その部分を出して欲しいと強調されていました」と振り返る。しっかり者の歩が事実上の“家長”的な役割を果たす。破滅的にすら見えるゴウの姿は、見る者によってさまざまな色合いを帯びて映る。歩は劇中、ゴウと最も対じするシーンが多い人物。度胸を求められる役でもあった。

 撮影現場ではコロナ対策で会話は最小限に制限された。雑談もままならない。しかし、最初の配役だった志村けんさんがコロナに倒れ、沢田が代役を引き継いだ。その姿を通して「志村さんへのリスペクト、志村さんのためにやろうとなさっている強い信念のようなものが伝わってくるようだった。でもあの役を受けるだけでも、ものすごい決意だったと思います」。寺島は親子でぶつかるシーンも敬意を秘めて演じた。

 女優を始めて30年にして初めての山田洋次ワールドは、新鮮そのものだったという。寺島といえば、荒戸源次郎監督の「赤目四十八瀧心中未遂」(03年)で報知映画賞など主演女優賞を総なめにし、若松孝二監督の「キャタピラー」では田中絹代さん以来35年ぶりにベルリン国際映画祭で銀熊賞(最優秀女優賞)を獲得。演技派女優として知られる。

 「若松監督は本番、リハーサル関係なくカメラ回ってましたからね」若松組では極限状態にも近いカオス的な現場で役に没入してきた。一方、山田組については「本番に入るまでの空気づくりを徹底して大事にされるのが分かった。そしてそれを熟知されたスタッフの方々との連携もすごい。ある場面で監督は出演者のセリフ回しで『半音違う』と指摘されていたんですね」。細部に至るまで妥協を許さないこだわりに圧倒されたという。終盤で歩のセリフに、これからの映画の世界に希望を込めた箇所がある。6月の完成披露の際、山田監督は寺島にこの役を託して良かった、ということを明かしている。

 意外にも松竹映画への出演も今回がほぼ初めてだった。ところが、寺島は和装が似合う大物女優で飾られる「松竹カレンダー」の“レギュラー”メンバーに定着。女優として名実ともに申し分ないのだが、本人は心の隅で申し訳なさのようなものを抱えてきたそうだ。

 「父(歌舞伎の人間国宝、尾上菊五郎)も『どうしてお前がカレンダーに出てんの?』とずっと不思議がってたくらい。でも今回出られたことで、ようやく少し松竹のお役に立てたかな、と思ったりしているんですよ」と言って照れくさそうに笑った。

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