大迫傑、約束の「家族で駅伝」 その日が、本当の引退になるのかも…父・猛さん手記

スポーツ報知
06年、全中男子3000メートルで3位に入り家族と記念撮影する大迫(左から2人目)と、父・猛さん(左端)ら(家族提供)

◆東京五輪 陸上 男子マラソン(8日、札幌大通公園)

 男子マラソンで現役ラストレースに挑んだ大迫傑(30)=ナイキ=が、五輪では日本男子最速の2時間10分41秒で6位入賞を果たした。日本人では12年ロンドン五輪6位の中本健太郎以来、2大会ぶりの入賞だった。見守ってきた父・猛さん(58)がスポーツ報知に手記を寄せた。

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 傑、お疲れさま。満足できる走りができたかい? 正直、親からしたら運動会を見ているのと同じだからね。たとえ五輪が中止になっても、それを糧に次のレースをがんばってくれたらいいと思っていたから…。無事の開催と自分で納得できる走りができたなら、それが一番です。

 これを最後にするって聞いたのは、発表する前の日だったね。「なんで?」とは聞かなかった。自分で決めた道だから、その選択に傑なりの理由があるのは分かっていた。今までの進路もそうだったし、そういうふうに育ててきたつもり。とりあえず「足痛くない?」って聞いたら「子どもじゃないんだから」って笑われたけど、親からしたら、子どもはずっと子どもだし、家族はずっと家族。これは一つの区切りだけど、終わりじゃない。50歳、60歳になって「今が幸せ」と言ってくれたら何よりです。

 中学時代はなかなか練習環境が整わなくて、苦労したこともあったね。それでも先生方や(陸上クラブの)清新JACの皆さんにお世話になりながら、3年生の時には3000メートルで全国3位。あのレースが今でも1番記憶に残っているかな。でも、結果よりも雨の中で黙々とウォーミングアップする姿を見た両角速(もろずみ・はやし)監督(現・東海大監督)がスカウトしてくれたね。そんな監督に「僕はどこまで伸びますか」ってまっすぐな瞳で聞いていたのをよく覚えているよ。

 時々、傑はものすごく運が良いんじゃないかって思うことがある。もちろん、やるべきことをやった上でなんだけど。佐久長聖高では村沢君(明伸、現SGホールディングス)をはじめ、たくさんのライバルにも恵まれて、早大でも米国遠征に行かせてもらったり。中学も高校も、個人では日本一になれなかったけど、そんな悔しさもあったから今があるんじゃないかな。

 今回の五輪延期も、傑にとっては追い風になったんじゃないかな。MGC(マラソングランドチャンピオンシップ)で優勝を逃して、その半年後に東京マラソンで日本新(当時)。さらにその数か月後に五輪という本来のスケジュールでは、やっぱりピークを合わせるのは厳しい。1年延期は体を休められたと同時に、さらなる進化もできた貴重な期間になったよね。

 今までは年に何回かしか実家に帰ってこなかったけど、そのたびにのんびり一緒にお酒を飲んだりする時間が大切でした。もちろん、孫の顔を見られるのが何よりも楽しみだけど(笑い)。あっ、そうだ。早大に入学する時の条件覚えてる? 「家族全員で駅伝を走る」。タスキをつなぐその日が、本当の引退になるのかもしれないね。いつになるか分からないけど、一緒に走るのを楽しみにしているよ。

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