リレー侍、成功ばかりシミュレーションか…北京「銀」高平慎士氏観戦記

スポーツ報知
1走・多田修平と2走・山県亮太がバトン受け渡し失敗 痛恨の失格(左から)小池祐貴、多田修平、桐生祥秀、山県亮太(カメラ・竜田 卓)

◆東京五輪 陸上 男子400Mリレー決勝(6日、国立競技場)

 男子400メートルリレー 男子400メートルリレー決勝が行われ、多田修平(25)=住友電工=、山県亮太(29)=セイコー=、桐生祥秀(25)=日本生命=、小池祐貴(26)=住友電工=の順で臨んだ日本は、多田と山県の間でバトンが渡らず、途中棄権に終わった。16年リオデジャネイロ大会の銀メダルに続く、2大会連続の表彰台を逃した。08年北京五輪銀メンバーの高平慎士氏(37)が、スポーツ報知に観戦記を寄せた。

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 五輪は油断できませんね。バトンミスは、これまで成功体験が積み上がってきた分、成功ばかりシミュレーションしてしまった結果かなと思いました。ゼロから100まで、全ての可能性を想定して走れていたか。山県や桐生らリオ銀メンバーは、五輪の借りは五輪でしか返せないことをよく分かっていると思う。全員予選敗退した個人種目の結果も含めて反省し、五輪という場で戦う取り組みを見つめて、速さだけではなく強さを求めてほしいと願います。

 400メートルリレーが、こんなにも心をひきつけるのはなぜか。やはり世界最高峰のスプリンターが、一つのトラックに集結して走ることが大きな魅力です。100メートルの決勝は8人しか出られないけど、リレーは純粋に速い選手が32人も集まります。100メートルは、陸上の中でも“1番を決める”という意味で最高峰だと思っていて、闘争心むき出しに最速を争う種目。そんな世界で生きる人が、リレーではライバルとも協力して頑張る。その面白さも、リレーならではだと思いますね。

 13年前、北京五輪決勝の高揚感や緊張感はすごかった。メダルを狙える位置だったし、レース前に朝原さんが叫んでいるのを見てしまって、余計に緊張した。バトンゾーンを抜けたくらいで、結構前の方にいるな? 2番だな!と。逃げ切ったらメダルだと思って走りました。終わってすぐ順位が分からなくて、朝原さんが「どう?」って聞くから、僕は3本指を立てて見せたのを覚えています(※注)。朝原さんがバトンを投げたシーンも有名ですけど、実際はバトンがどっか行ってしまったのは、全然意識がなくて分からなかったですね。

 僕が、メダルを追いかけて戦っていたことは事実ですけど、やはりその前に朝原さんや末続さんが挑戦し続けてきた。現在のリレーチームを率いる土江さんもそうですね。いろいろな方々が挑戦してきた土台があったからメダルを取れた、という気持ちが大きかったです。やるべきことをやった上に、男子のトラック種目で初めてという歴史的な結果がついてきた。メダリストという肩書を持つことで、競技を引退した今も活動の幅が広がっているのもありがたいなと思っています。

 今大会で、世界の勢力図も大きく変わりました。100メートル王者のヤコブス擁するイタリアは強かったし、ガーナも決勝進出すると予想した人は少なかったんじゃないか。金メダルは、簡単ではない。今後は合宿や練習のやり方も含めて見直し、成功や失敗をたくさんチームで共有して、力量を上げていってほしいです。(富士通陸上部スタッフ・高平慎士)

 (注)…08年北京五輪から10年後の18年12月に金メダルのジャマイカがドーピング違反により失格となり、日本は銅から銀メダルに繰り上がった。

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