「よく戻ってきたね」梨紗子「コツコツ頑張ったね」友香子…偉大な娘2人へ母・川井初江さん手記

スポーツ報知
東京五輪前に金沢の茶屋街を訪れ、金ぱくソフトクリームで5つの輪を作った川井家(家族提供)

◆東京五輪 レスリング女子57キロ級 決勝(5日、千葉・幕張メッセ)

 レスリング女子57キロ級金メダルの川井梨紗子(26)と、62キロ級を制した妹・友香子(23)=ともにジャパンビバレッジ=の母・初江さん(51)が、スポーツ報知に手記を寄せた。

 梨紗子、友香子、本当によくがんばったね。今はとにかくホッとしています。ずっとがんばっている姿を見てきたから。心の底から2人を誇りに思います。

 この3年間は私たち家族にとって、とても濃い時間でした。2018年12月の全日本選手権で梨紗子が伊調馨選手に負けた後、会場の巨大スクリーンの裏に隠れて2人で話をしました。泣きながら「もう耐えられない。やめたい」って言う梨紗子に「わかった」と返しました。「ああ、無理だな」って思ったんです。あの異様な雰囲気のなかでまた試合をすることが。

 年末に実家に戻ってきてからも、梨紗子は「もういい」って。気持ちは揺れていました。所属先のジャパンビバレッジさんにお世話になっているし、応援してくれている人もいるから。はい、やめたい、やめます。っていうわけにはいかないこともわかっていました。「でもやっぱり無理だ」。そんなやり取りの繰り返しでした。「どうしても無理だったら、一緒に謝りに回ろう」と声をかけました。

 引退は必ず来るものです。でも、私は最後の試合だと思って見ていませんでした。「もう一回梨紗子の試合が見たい。このまま見られないって思ったら、それは寂しい」「じゃあ(五輪)非階級でもいい?」「いいよ。なんなら海外の小さな試合でもいいよ。それを最後と思って母が見られるなら、それでもいい」。あの頃は引退に大きく気持ちが傾いていました。

 年明けに突然「明日から頑張るわ」とラインが来たんです。ビックリして「いきなりどうした?」って返信を打ちました。吉田沙保里さんのお母さんのおかげでした。「ありがとうございました」と連絡をさせていただいたら「梨紗子なら大丈夫。お母さんもがんばってね」と返事をいただきました。本当に多くの人の支えがあって、マットに戻ってくることができました。

 妹の友香子が4日に金メダルを取りました。あの友香子が…と思うと、涙が止まりませんでした。3姉妹のなかで争いごとには一番向いていない性格。手がかからない、おとなしい子でした。思っていることを口にすることが苦手で、はっきり物を言う梨紗子とは正反対なんです。

 16年4月の練習中に左肩からマットに落ちて、完全脱臼をしました。激痛だったはずです。なのに「痛い」とも言わずに静かにうずくまっているだけ。梨紗子が「あんた、何してるの?」と寄って行ったら、肩が外れていたんです。全身麻酔の手術をして、実戦復帰に1年を要しました。不安だったでしょう。肩のけがは再発しやすいから「焦るな、がまん」と言い続けました。

 昔から、何でも寡黙にコツコツやる子です。リハビリ用のゴムを持ち歩き、実家に戻った際にも時間を見つけてやっていました。梨紗子も「内に秘めている気の強さは友香子の方が上」と認めます。梨紗子がいなかったら、ここまで頑張れていなかったかもしれません。でも最近は自立して、たくましくなりました。

 代表選考があって、五輪の延期があって、いろんなことがありました。2人を応援して支えになることは母として当たり前。先にくじけるわけにはいきません。まずは一度、ゆっくりしましょうね。子供の頃から大会でメダルを取ったら私の首にかけてくれるんです。多くのことを経験して、たどり着いた表彰台です。今回の2つの金メダルは、とても重たく感じると思います。(川井 初江)

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