田中希実、日本新で初決勝…スピードの源は身長153センチとは思えない腰の高さ

スポーツ報知
女子1500メートルで決勝に進出した田中希実(左、ロイター)

◆東京五輪 陸上 女子1500M準決勝(4日、国立競技場)

 女子1500メートル準決勝が行われ、日本記録保持者の田中希実(21)=豊田自動織機TC=が日本人で初めて4分を切る3分59秒19の1組5着で6日の決勝進出を決めた。2日の予選で更新したばかりの日本記録を3秒14も塗り替えた。日本勢初出場となった同種目で、いきなり世界トップの13人に名を連ねた田中の強さを、陸上担当の太田涼記者が「見た」。

 見上げていた領域に飛び込んだ。先頭集団からこぼれそうになる残り1周。田中は体1つ分の差を思い切って詰めると、5人でのスパート勝負に持ち込んだ。「いっぱいいっぱいだったけど、前の選手も止まっていた」。苦しさが凝縮された一瞬だった。第2集団を突き放し、前傾姿勢でゴールを踏み越えると小さく笑った。「うれしい気持ちが強すぎて…。あさって走るという実感が湧かない。ちょっと今もふわふわしているかなという感じ」

 自分の“土俵”に引き込んだ。父・健智コーチは「準決勝が天王山と思って臨んだ」と着順優先の予選と同じ展開を提案。スタートから先頭で果敢に攻め、その後も3番手前後の好位置をキープした。「ケンカしたり、苦しい修羅場というのを何回も抜けて、ここの競技場でもいろいろな思いを経験した。今までの1500メートルの道のりがあったからこそ、今日走れたのかな」。全力でぶつかり合った父だからこそ、全幅の信頼が置くことができた。

 田中の武器であるスピードの源は、身長153センチとは思えない腰の高さだ。昨年7月、一緒に朝練習をした。3000メートルで18年ぶりに日本新をマークしたレースの翌日でペースはゆっくりだったが、一番驚いたのは「田中の後ろは走りやすい」ということ。身長175センチの自分とほぼ同じストライド。20センチ以上ある身長差を感じさせない歩幅とリズムは、世界のトップランナーと並んでも遜色ないレベルだと肌で感じた。

 五輪では「走れば日本新」と歴史を塗り替え続ける21歳。6日の決勝には、5000メートルで金メダルを獲得し、1500メートル、1万メートルと史上初の3冠を目指すハッサンと走る。「ハッサン選手に及ばないと思うけど、残り400メートルはこだわってきたので、そこでヨーイドンしてみたいという気持ちもある」。4分の壁も決勝進出もまだ通過点。底知れぬ速さと強さに、世界が驚く日は近い。(長距離、マラソン担当・太田 涼)

 ◆田中希実に聞く

 ―決勝進出。

 「何年か前の自分は日本選手権でも予選落ちしていたくらいなので、全然想像もできないこと。決勝も本当にあさって走るのかなって」

 ―ふわふわしている。

 「大きい舞台だと自分でも気持ち悪いくらい気持ちが上がるというか、人格が変わる部分がある。五輪だから楽しもうという気持ちを大事にしてきた」

 ―高い集中力。

 「ゾーンかな?と思います。いつもより物事を前向きにとらえられたり。5000メートル予選落ちの後もすぐ気持ちを切り替えられた。世界の五輪という空気に助けられている」

 ―五輪での1500メートル。

 「1500メートルで初出場という舞台は最初で最後。次からもし五輪に出られたとしても、今のような気持ちで走ることはできないと思う。強いて言えば中学以来の、人生2回目くらいの気持ちなので、次いつ巡り合えるか分からない、一期一会の部分を大切にしたい」

 ◆田中 希実(たなか・のぞみ)1999年9月4日、兵庫・小野市生まれ。21歳。小野南中3年で全中1500メートル優勝。西脇工高で全国高校総体3年連続入賞。18年U20世界陸上3000メートルで日本人初優勝。同志社大に進学。19年ドーハ世界陸上5000メートル14位。自己記録は1500メートル3分59秒19、3000メートル8分40秒84でともに日本記録、5000メートルは14分59秒93。家族は両親と妹。好きな授業はアイルランド文学。

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