中村憲剛氏、孤独を乗り越え流す涙は尊い…アスリートリレーコラム

中村憲剛氏
中村憲剛氏

 テレビ画面越しに家族(妻、子3人)で東京五輪を見ています。コロナ禍で開催の是非が問われていますが、子どもたちが食い入るように見ている姿や、家族で感情を共有する瞬間が訪れるたびに、やはりスポーツはいいな、素晴らしいなと感じる自分もいます。自国開催で時差なく、多くの競技を見られることは子どもたちの夢や目標の創出という点でも大きな意義があると感じます。

 私が五輪を見て改めて思うことはやはりアスリートは孤独と闘っているということです。普段は家族や指導者、チームメート、ファンの方に支えられ、それを力に変えてこの舞台にたどり着いた方たちだと思います。ただ、人生をかけ、やっとたどり着いた五輪で世界の猛者を前にし、力を発揮するその瞬間だけはどうやっても自分ひとりで闘わないといけない。孤独を乗り越えなければならない。

 状況に左右されずに、信念を貫けるか。サッカーにおいて、FWの選手は「孤独」であると耳にしたことがあります。仲間が一生懸命つないだパスを、自分が決めれば勝利に近づき、外せば負けるかもしれない。シュートを打つ瞬間は一人でその重圧を背負わなければならないからです。誰も助けてくれません。私もPK戦で孤独を感じたことがあります。自分のひと蹴りでチームの浮沈が決まる。同じ感覚かはわかりませんが、極限状態であることは想像できます。だからこそ、その孤独を乗り越え流す涙は尊いのだと思います。

 ここまで見てきて、ソフトボールの上野由岐子投手の涙はほとんど同世代ということもあり、とても重く感じました。卓球の混合ダブルスでは水谷・伊藤ペアが真っ向勝負で中国の壁を破った姿に「すげぇ」と声が出ました。柔道・阿部きょうだいの鋭い眼光と、試合後の優しい目に武道を感じました。いろいろなものを乗り越えてきた涙は本当に美しい。純粋にそう感じます。

 一方で、結果を残してきた実力者が敗退するシーンも目にしました。一歩間違えば結果を残せない、五輪という舞台での難しさを感じさせられました。勝者とのコントラストは残酷に見えます。でも、敗退=失敗ではありません。次の成功に向けての糧だと思います。糧にできる選手が結果を残せると私は信じています。

 コロナ禍による延期や様々な制限を乗り越え全力を尽くそうとする選手たち皆さんに、今日もテレビ越しで声をからして応援し、勝敗問わず心から拍手を送りたいです。

(元日本代表、川崎MF・中村憲剛)

 ◆中村 憲剛(なかむら・けんご)1980年10月31日、東京・小平市生まれ。40歳。都久留米高(現・東久留米総合高)から中大に進学。03年に川崎加入。06年10月ガーナ戦で日本代表デビュー。10年南アフリカW杯日本代表。昨季限りで現役引退。国際Aマッチ通算68試合6得点。J1通算471試合74得点。

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