中長距離エース田中希実、日本記録保持者で学年トップ5の秀才 ゼミの石井教授が明かす「妥協しない」姿勢

スポーツ報知
今月10日、非五輪種目の3000メートルで日本新をマークした田中希実

 陸上競技が30日に東京・国立競技場でスタートする。初日の5000メートル予選と8月2日の1500メートル予選に出場する田中希実(21)=豊田自動織機TC=は、現役の同志社大4年生。中長距離2種目の日本記録保持者でありながら、学生として授業、リポートもぬかりなくこなす。文武両道を貫く姿勢を、所属する大学ゼミの石井好二郎教授(57)が明かした。

 神は細部に宿る―。石井教授は、学生であり、アスリートでもある田中の人柄をそう表現する。スポーツ健康科学部4年の田中が所属する「運動処方」研究室を担当し、日本陸連の科学技術委員なども歴任したスポーツ医科学のエキスパート。田中は名教授の下で、どんなことを学んでいるのだろうか。

 石井教授「特別扱いはしていません。彼女は学年トップ5に入る秀才ですが、ゼミ内にはそれより上の学生もいるのでお互いに刺激を受けているようです。今やっているのはコンディショニングについて。トレーニングの大原則である運動、栄養、休養の中で、休養の研究が一番進んでいない。体重を減らす、あるいはトレーニングを増やすといったことを無理にせずに、自分で体調を見極める。ある意味、“休み方”の研究です」

 高齢者や子どもの“休み方”を考察する学生もいるというが、田中はアスリートに焦点を当て研究している。オンラインで行われた前期の発表会でも高評価を得た。一方、その週のホクレンディスタンスチャレンジ千歳大会(17日)1500メートルでは、自らの持つ日本記録を更新する4分4秒08をマークした。

 石井教授「『これはいいだろう』みたいな妥協が全くない。今までに他の日本代表の選手も見てきましたが、大会や遠征に行くからと授業やリポートをないがしろにする学生がいました。でも、そういう選手は伸びない。競技だけに集中すれば伸びるかというと、そうではないことの証明だと思います」

 提出物の締め切りは必ず守る。受けられる授業は、オンラインで受講する。昨年10月の日本選手権では、800メートル予選と1500メートル決勝のレース間の約4時間30分間を使い、スマホと資料を広げてオンラインで授業を受けた。「緊張とかがうまくほどけた感じ」と1500メートルでは初優勝。毎週のようにレースに出場し、東京五輪での2種目最大4レースに対応するタフさを身につけた。文武両道を地で行く21歳の強さとは、どこにあるのか。

 石井教授「ある時、フォアフット(つま先から着地)走法について勉強していたんです。いろいろ論文とか読んで走っていたからなのか、グラウンドで見かけたときには、ミッドフット(足底の中央付近)だったのが、つま先からの接地に変わっていました。フォームを変えたのではなく、速く走ろうとしたら自然と変わった。深く知るからこそ、知識を体現できる。こだわって、こだわり抜いたからこその美しさが彼女にはあると思います」(太田 涼)

 ◆田中 希実(たなか・のぞみ)1999年9月4日、兵庫・小野市生まれ。21歳。小野南中で本格的に陸上を始め、3年に全中1500メートル優勝。西脇工では全国高校総体3年連続入賞。2018年U20世界陸上3000メートルで日本人初優勝。同志社大スポーツ健康科学部に進むが、クラブチームに所属し競技を続ける。19年ドーハ世界陸上5000メートルで日本歴代2位(当時)の15分0秒01で14位。自己記録は1500メートル4分4秒08、3000メートル8分40秒84でともに日本記録。家族は両親と妹。好きな授業はアイルランド文学。

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