MLB初の女性社長誕生、マリナーズの新社長は2児を持つ39歳の才女…多様化するアメリカの象徴

マリナーズのケイティー・グリッグス社長
マリナーズのケイティー・グリッグス社長
マリナーズのケイティー・グリッグス社長
マリナーズのケイティー・グリッグス社長
マリナーズのケイティー・グリッグス社長
マリナーズのケイティー・グリッグス社長

 シアトル・マリナーズ球団が28日(日本時間29日)、ケイティー・グリッグス氏(39)の社長就任を発表する記者会見を開催。MLB機構30球団中、初めての女性による球団社長が誕生した。

 昨年11月、MLB史上初の女性ゼネラルマネージャー(GM)となったフロリダ・マーリンズのキム・アングGM(52)の就任は、男性主流の米プロスポーツ業界のジェンダーギャップを打ち破ったとして全米で大きなニュースになったが、今回のマリナーズにおけるグリッグス社長就任も話題性は抜群だ。

 このニュースの話題性が高いのは、グリッグス新社長が「米プロスポーツ・ビジネス界の女性リーダーのひとりとして高く評価されている39歳の才色兼備な2児の母だから」だけではない。グリッグス新社長は、今年2月に辞任に追い込まれたケビン・マザー元最高経営責任者(CEO)の後任だからだ。

 覚えているだろうか? マリナーズで選手として活躍した岩隈久志コーチや現役選手など、外国からやってきた選手らの英語力不足に対する不適切な発言をオンラインでして、その録画が流出して大炎上した事件のことだ。今、振り返っても、なぜ何十年も勤めた前社長がわざわざ社会的自殺行為な発言をしたのか、その意図が不明瞭なままの謎の事件である(「Zoom時代に生きるということ」マリナーズ球団社長、48時間の辞職劇に思う)。

 アメリカでは、男女のジェンダー平等を訴える運動や人種差別反対運動、それに関する市井の声は、政党の投票数や政治家・企業・団体などの存続にも影響を及ぼすほど大きい。それゆえ企業のマーケティング部や広報部は、どんな小さな広告やプレスリリースを打ち出す際にも、そこに使用する言葉や写真選び、広告を打ち出すタイミングなどのすべてにおいて、これでもかと言うほど慎重に対応する。「その一言(一枚)が企業を滅ぼす」と言っても過言ではないほど、ポリティカル・コレクトネス(略称ポリコレ、PC)は重要であり、それを無視して企業戦略は作れない時代になっているからだ。

 そんな背景がある中で、「フェアプレーの精神」を賞賛するスポーツ業界の一大企業である球団が、ポリコレに慎重を期すのは当然だろう。

 それゆえ、あんな失言をしてしまったマザー元最高経営責任者の後任探しに、マリナーズは約5か月という長い月日をかけて、慎重に人選をした。大球団の社長が半年も不在というリスクを顧みず、「マザー元最高経営責任者の失言の黒歴史を塗り替えて、新生マリナーズ球団のスタートを助走なしで切れる人」を探し続けたのだ。その人は、黒歴史と化した前任者とは、比較対象にさえならないような「時代を表すフレッシュな人選」でなければならない。

 スタントン球団会長は本日の記者会見で、「後任の社長を選ぶために球団内外のメンバーからなる特別委員会を作り、ヘッドハンティング網を全米に広げ、その中から100人を超える候補者を選び、面接を繰り返した」と話した。そんな高倍率をくぐりぬけて選ばれたのが、グリッグス新社長だった。

 過去4年間、MLSサッカーのチーム、アトランタ・ユナイテッドのチーフ・ビジネスオフィサーとしてフロントオフィスをけん引し、観客動員記録をたてるなど様々な戦略で収益をあげると共に、同クラブのスタッフの多様化を進めるなどの多くの成果を出している。また、スポーツビジネス業界の女性リーダーに与えられる『スポーツ・ビジネス・ジャーナル』のゲーム・チェンジャー賞をはじめ、数々の賞を受賞。若くて、美しくて、頭も性格も良くて、感じも良くて、家族円満でビジネスキャリアも高評価な白人で、業界初の女性社長。そもそも同じ土俵に立っていないのだから、しくじった前任者と彼女を比較することすらできない……完璧だ。

 この人事を単なる「シンデレラ・ストーリー」として片付けるのは簡単だが、そうは問屋がおろさないのがアメリカのおかしな醍醐味だ(笑)。グリッグス新社長は、ただ者ではない。現米副大統領ばりに弁が立つ、キレッキレのビジネス・ウーマンなのだ(笑)。たとえば、このエピソードで少し彼女のことがわかるかもしれない。

 記者会見で地元のベテラン記者が「MLB女性初の社長になったことについて、思うことはあるか?」と問うた。それに対して、39歳の才女はこう答えた。

「今まで私が務めてきた様々な役職でその都度、女性初だと言われてきました。私がそうすることによって後輩女性たちがあとに続くことができるので、どれもとても光栄なことだと思っています。でも私自身は、自分がその役職についたことに対して、性別はまったく関係ないと思っているので、そのことについて考える時間を取ることはありません」

 これを笑顔でキリッと回答したグリッグス新社長は、とてもチャーミングだった。

 きっと、この彼女の回答のように振り切った感じが今のアメリカであり、アメリカの多様性は日々スピーディーに進化を続けているのだと思う。今後、それがどこへ向かうのか、目が離せない。(シアトル在住・本紙メジャー通信員=秋野 未知)

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