プロ野球は27日、各地で五輪期間中のリーグ戦中断に伴うエキシビションマッチが開幕。各球団とも後半戦に向けた戦力整備を進めていく中で、巨人・原辰徳監督(63)が首位・阪神を2ゲーム差で追う形で終えた前半戦を総括した。故障者が相次いだ中でのマネジメントとは何だったのか。指揮官の本音に迫る連載「原動力」でチームの成長、そして逆転でのリーグ3連覇へ挑む後半戦でのキーマンを明かした。(取材・構成=西村茂展)
原は自軍の奮闘に思いを巡らせた。新型コロナの陽性判定や故障で、主力に長期離脱が相次いだ前半戦を首位・阪神とは2差の2位で折り返した。
「主力選手がなかなか(そろわない)、という中で選手はよくやっている。いい位置につけてる。毎日修正しながらでもスタメンも固まりつつあるし、チームとしては成長してるかなという気はするね」
冷静に、戦局をにらんでいた。象徴したのが、交流戦を終えリーグ戦再開時に発した言葉。首位とは7ゲーム差あった中で「思ったより差は開いていないな、という感じだね」と話した。その真意とは―。
「まだ先に勝負の時は必ず来ると思っていた。差が少しでも詰まってくると、それまでできていたことができなくなるケースはあるんだよ。強がりだと思っていただろ? 13ゲーム差を追いかけた時だってあるんだからさ。怖いものはないよ。何が7だよって(笑い)」
追う経験も、追われる経験も持つ。19年には2位に10・5ゲーム差をつけたが、約2週間で0・5差まで詰められるなど追われる苦しさを一番分かっているから言えた言葉だった。
「考えてみれば、安定した戦力で戦っていないのは事実だね。でも、そんなこと、一言も言ったことない。『これが今日のベスト』という中で戦っている。それは今年改めて、非常に教訓になっているし、勉強させてもらっている」
その裏には、原の人生観も大きく影響している。起こったことに対して悲観してばかりではなく、全てを力に変えようと捉えてきた。
「これまでいろんな本を読んだり、多くの人の話を聞いたりして、いつしかそういう考えに行き着いたんだよね。確かに、一回レールから外れると、また勢いをつけるのは大変。だからリズム、流れというのは大切なんだよ。人生もそう。いいことばっかりじゃない。だから逆風が吹いた時に、小難、小さな難でよかったと考えることができるか」
選手にもその考えは浸透している。主力に故障が増えた一方で、苦境を救おうとビエイラ、大江、松原、北村が台頭。チームの底上げにつながった。
「本当にそうだね。その中で、役割以上の働きをする選手たちが出てきているのは大きいね。特にビエイラの成長は非常にうれしいね。常に前向きに黙々と練習に打ち込む姿を、我々も知っているしね」
五輪期間中は、8月13日に始まる後半戦へ向け戦力整備をしていく。その中でキーマンとして挙げたのは、菅野の完全復調だった。
「やっぱりエースが中心になること。これだけエースがいない状態で、(チームは)本当によく頑張っていると思う。まだまだペナントは5分の2くらいはある。そこに彼が、輪の中心になるのは大事なことだね」
さらに、新戦力の発掘&台頭プランも練る。計7試合のエキシビションマッチには1軍未経験の若手を帯同させ、逆にレギュラー奪取が期待される中堅クラスには2軍で多く打席に立たせて、主力を脅かす存在へと成長を促す。限られた時間を有効に使い、勝負の時を見据える。(敬称略)
◆巨人の主な故障抹消選手
▽3月30日・菅野 脚部違和感。4月9日復帰
▽4月24日・サンチェス 右肩違和感。5月5日復帰
▽同28日・テームズ 前日ヤクルト戦で右アキレスけんを断裂し米国へ帰国
▽5月8日・菅野 右肘違和感。6月6日復帰
▽同10日・坂本 前日ヤクルト戦で右手親指骨折。6月11日復帰
▽同17日・増田大 右太もも裏痛。7月11日復帰
▽同19日・野上 右肩異常
▽同25日・梶谷 左太もも裏違和感。6月22日復帰
▽6月2日・デラロサ 左脚違和感。7月3日復帰
▽同11日・吉川 前日オリックス戦で死球を受け左手中指骨折
▽同22日・中川 左第十ろっ骨骨折
▽7月11日・梶谷 前日阪神戦で死球を受け右手骨折