お笑いコンビ「ロッチ」の中岡創一(43)は奈良県橿原市の中学で「ホッケー」を始めた。小学6年のころ、3歳上の先輩が中学日本一に輝いた姿を見て「やってみようかな」という軽い気持ちがきっかけだった。だが、中学では「想像以上」の日々が待っていた。
水を飲めない。ランニングは顧問が「やめ」と言うまで終わらない。今でも忘れられないのが、スティックでタイヤを打ち、グラウンドを1周するメニューだ。「芯に当たらないと全く進まないし、手の皮もボロボロ」。手首、腰、足首には砂が入った自転車のチューブを巻いた。
少しでも楽をしようと軽いタイヤを選別していると、わざわざ重いタイヤを選ぶ同級生がいた。後に日本代表で活躍した吉田一男氏(43)=東農大女子ホッケー部監督=だった。「皆が『なんやねん、これ』とチューブを外した時も吉田君は最後まで付けていた」。吉田氏の背中を追いかけるうちに、次第に競技の虜(とりこ)になった。「ボールコントロールをできるようになると楽しくて。とにかくシュートを決めるのが快感でした」。中学で奈良県選抜に入り、高校はスポーツ推薦で強豪の京都・大谷高に進学。ホッケーと真剣に向き合った。
20年2月からは日本ホッケー協会公認アンバサダーにも就任。五輪の注目ポイントには「スピード感」を挙げた。「昔はファウルになると、ボールを止めてスタートしていたんですけど、今はすぐに再開するので走りっぱなし。ゴールの瞬間もよく見ていないと見逃しちゃいますからね」。注目選手は、ドリブルテクニックにたけた山崎晃嗣、世界最高峰とされるオランダのリーグで活躍している田中健太。「イメージ出来ているんですよ。ラグビーやなでしこジャパンみたいに(W杯のような)大会後に(ホッケーが)盛り上がる感じ。ラグビーもルールを知らない人が楽しんでいたでしょ。『アイス』ホッケーと言われることが多いですけど、それを覆すような活躍期待しています」(田中 雄己)
◆中岡 創一(なかおか・そういち)1977年12月8日、愛知県出身。43歳。京都・大谷高在学中に大阪NSC16期生として入学。05年に事務所の先輩であるコカドケンタロウに誘われ、「ロッチ」を結成。162センチ。