阿部詩が涙の金メダル! 柔道女子52キロで初…兄・一二三と悲願の兄妹同日金メダル!

スポーツ報知
女子52キロ級決勝、ブシャール(右)に勝利し、金メダルを獲得した阿部詩(カメラ・相川 和寛)

◆東京五輪 柔道女子52キロ級決勝(25日、日本武道館)

 柔道女子52キロ級で阿部詩(うた、日体大)が金メダルを獲得した。初出場の阿部は初戦から順調に勝ち上がり、決勝ではアマンディーヌ・ブシャール(フランス)に延長の末、一本で勝ち、この階級では日本柔道初となる金メダルをもたらした。男子66キロ級の兄・一二三(パーク24)も金メダルを獲得し、兄妹五輪同日金メダルを決めた。性別の異なる日本のきょうだいが五輪のメダルを獲得するの初めて。

 世界でその力を見せた詩。だが、決して順風満帆ではなかった。2016年8月、高1の全国高校総体で、優勝候補と言われながら1回戦でまさかの反則負け。「柔道人生で初めて一回戦負け」だった。詩は優勝候補に挙げられるほどの力はなかったという。「お兄ちゃんが凄いから、その妹ということで…」。その時、初めて試合をするのがイヤだと感じた。「今までやってきたことが全て間違いだったと思った」。そんな詩に、一二三が電話をかけてきて「こんな負けで落ち込むな。次に頑張ればいい。まだチャンスがあるんだから」などと励ましてくれた。当時、一二三はリオデジャネイロ五輪代表の座を逃しており、どん底の状態だった。そういう状況でも妹を思いやる兄の言葉だからこそ「すごい心に響きました。自分はつらいのに…。心の持ちようが180度くらい変わった」。それまでは確かに、おごりみたいなものもあった。しかし、以降は市大会でも全国大会でも、常に同じ気持ちを持って臨めるようになった。

 世界選手権連覇で世界に敵なしの勢いだった19年秋にも“落とし穴”があった。11月のGS大阪大会決勝で、この日決勝で対戦したブシャールの変則的な組み手に翻弄され、延長で敗れて2位。16年12月にシニアの国際大会でデビューして以来、海外勢に49試合目で喫した初めての黒星に「神様からの試練」と人目もはばからずに号泣した。それからの3か月は決勝の映像を何度も見返す毎日だった。「一人でどこかに身を置いてやるのが一番強くなれる」と出稽古を重ね、しっかりと襟と袖を持つ基本の形を見直したという。

 昨年12月、一二三の五輪代表決定戦を両親と会場で見届けた。「今までで一番緊張しました。途中は見たくなくて目をつぶったり、下向いてる間に決まらないかなって願ったり…。試合中は全身震えが止まらなかった」。だが、兄は丸山城志郎(ミキハウス)との24分にわたる死闘を制した。「決まった瞬間、いろんな感情がバッと出てきて、結構泣いていた」という。「先を行っていた兄の背中をずっと追いかけてきたので、まさか私の方が先に五輪代表に決まることは考えてもいなかった。ずっと不思議な感情で、私が決まった時も素直に喜べなかった」という詩。晴れて兄妹が五輪初出場を決めたが、日本初の兄妹同日出場の“オマケ”付き。詩は夏空のように、すっきりと晴れやかな気持ちで日本武道館の畳で躍動した。

 ◆阿部 詩(あべ・うた)2000年7月14日、神戸市生まれ。21歳。5歳で柔道を始め、兵庫・夙川学院中、高から日体大に進学。17年GPデュッセルドルフで、ワールドツアー史上最年少16歳で優勝。同年GS東京、世界ジュニア選手権、18年GSパリ、GS大阪優勝。20年GSデュッセルドルフ優勝。21年GSタシケント、GSカザン優勝。世界選手権は18年から2連覇。得意技は内股、袖釣り込み腰。159センチ。家族は両親と兄2人。

スポーツ

NEWS読売・報知 モバイルGIANTS 個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真 法人向け紙面・写真使用申請