「安心安全」な大会が始まった 東京五輪開幕

選手宣誓を行う石川佳純ら(カメラ・矢口 亨)
選手宣誓を行う石川佳純ら(カメラ・矢口 亨)

 「安心安全」な大会が始まった。私は、夏季五輪は88年ソウル、00年シドニー両大会を取材した。最も印象に残るのは、ジャケットにこれ以上つけるところはないだろう、というくらいたくさんの、ピンバッジをつけたおじさんが、両都市にいたことだ。声をかけられる。「バッジを持っていないか」会社で作った特製品と日の丸のバッジを差し出すと笑顔が返ってきた。

 開幕するまでは、バッジをつけている市民はほとんどいない。だが「これが五輪の流儀なんだ」という感じで、日に日に幼い子から、ご老人まで自分の服にバッジの数が増えていく。「バッジ持ってない?」といつの間にか、その国の人たちにせがまれるようになり、気がつくと、持ってきていたピンバッジが底をついていた。しかし「ありがとう」の言葉とうれしそうな顔にはかなわない。バッジが世界をつないでいた。

 そんな風景は、今回の東京にはない。五輪は記者にとっても、その国の人々とはもちろん、世界中の人々との小さな交流の場だったのだ。街に世界中の人が集まっている。アスリートの応援に様々な国から人がやってくる。それこそが、私が見た五輪だった。それなくして、果たして五輪と呼べるのか。

 「安心安全」と主催者たちは呪文のように繰り返す。しかし、開会式が始まる前に、選手、大会関係者に感染者が100人も出ている。2度ワクチンを打ちながらも感染、あと数日のところで五輪にたどりつけなかった選手もいる。痛々しい思いだ。

 開会式。世界中のアスリートがマスクをしての入場だった。マスクに隠れた部分は笑顔だろう。やはり、五輪は一堂に集った入場行進があってこそだと思った。だが、一方で選手たちはコロナ禍の中、練習はできたのだろうか、準備は十分できたのだろうか。アンフェアな大会にならないだろうか。大会途中で無念の離脱者は出ないだろうか。不安はさらに募った。(久浦 真一)

コラムでHo!とは?
 スポーツ報知のwebサイト限定コラムです。最前線で取材する記者が、紙面では書き切れなかった裏話や、今話題となっている旬な出来事を深く掘り下げてお届けします。皆さんを「ほーっ!」とうならせるようなコラムを目指して日々配信しますので、どうぞお楽しみください。

スポーツ

NEWS読売・報知 モバイルGIANTS 個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真 法人向け紙面・写真使用申請