茶道の師匠が見た上野由岐子の投球 繊細で器用で丁寧で…「わび」「さび」を感じる結構なお点前でした

茶道に励むソフトボール日本代表の上野由岐子
茶道に励むソフトボール日本代表の上野由岐子
遠州茶道宗家・小堀宗翔さん(右)から茶道を教わる上野
遠州茶道宗家・小堀宗翔さん(右)から茶道を教わる上野
一緒にトレーニングも
一緒にトレーニングも

 東京五輪全33競技を通じての初戦となったソフトボールの開幕戦で日本を勝利に導いた上野由岐子投手(39)の丁寧な投球に「わび・さび」の心を見た人がいる。エースが茶道の手ほどきを受けている遠州茶道宗家の小堀宗翔さん(32)は「上野さんは繊細で器用で丁寧。茶室でのお点前がピッチングに表れていました」と教え子の好投に胸を震わせた。

 五輪のマウンドに立ったエースを見つめながら、小堀さんは静寂な茶室に座る上野の姿を重ねていた。「お茶室にいる時はアスリートではなく、素の上野由岐子さんです。優しく素晴らしい人間性を持った方。ご一緒する時はかけがえのない時間です。強い思い入れを持って見ていました」

 あの「413球」から4717日。39歳になる前日の上野は丁寧だった。コーナーを突いて変化球を低めに集める弟子の投球に、師匠はどこか茶室での所作にもつながる何かを感じていた。「小さく細い茶器を扱う時の上野さんのお点前や所作はとても繊細で器用で丁寧です。豪快なイメージからは想像もつかないくらい。ボールを投げる瞬間の滑りや掛かりなど、指先の感覚を常に大切にされているからだと思いました」

 いつも、ふとした瞬間にエースの「心」を見てきた。「茶道をすると皆さん必ず丁寧さを心掛けます。でも、ものから手を離す瞬間に心が表れたりします。上野さんは最後の最後までとても丁寧で物事を大切にしようという思いを感じるんです」

 自らも現役のラクロス選手で、2013年には日本代表としてW杯に出場した小堀さんは定期的に「アスリート茶会」を開催。競泳の池江璃花子や柔道の阿部一二三ら今回の五輪代表選手にも指導してきた。上野にも19年から指南を続けている。

 「お茶室では世俗の煩悩や肩書もなく、心の状態だけが表れます。茶道で得た心のバロメーターを大切にしてほしいです。今大会のスタートだった『おもてなし』の語源は『思いを持って成し遂げる』こと。自分の立つフィールドで思いを持って成し遂げ、幸せにつなげてほしいです」

 異論や逆風の中で始まる大会で、アスリートに求められるのは茶室にいる時のような乱れない集中力。上野は13年ぶりの金メダルを目指す。小堀さんは、静かな心で歓喜の時を待ち望んでいる。

(北野 新太)

 ◆小堀 宗翔(こぼり・そうしょう)1989年5月12日、東京都生まれ。32歳。本名・優子。遠州茶道宗家13世家元・小堀宗実氏の次女。学習院大卒業後、内弟子として茶道の世界へ。大学で始めたラクロスでは日本代表にも選出され、13年W杯出場。現在も社会人クラブチーム「ミストラル」に所属。

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