◆第103回全国高校野球選手権大会千葉大会▽4回戦 千葉黎明8―6千葉学芸(15日・長生の森)
あふれ出る涙をぬぐった。千葉学芸の高校通算70本塁打を誇る今秋ドラフト候補スラッガー・有薗直輝三塁手(3年)は、4打数2安打の活躍を見せたが、待望の今夏1号は出ないまま4回戦で敗退。甲子園初出場の夢は途絶えた。「悔しい気持ちが一番です。(本塁打を)打ちたかった。チームに貢献できなかった」と声を震わせた。
聖地への思いは人一倍強かった。佐倉シニア時代からスラッガーとして注目を集め、県内外の有力校から誘いの声がかかっていたが、すでに千葉学芸進学を決めていた4番・板倉颯汰一塁手(3年)に誘われ、入学を決意。「この学校に入ったのは甲子園に行くためだったので、本当に悔しい。自分が主軸として引っ張っていかなければいけない責任感があった」と涙ながらに語った。
やりきれない思いは、恩師も同じだ。入学直後から有薗を4番に起用するなど、逸材を大事に育て上げてきた高倉伸介監督(46)も「このステージで終わる選手じゃない。甲子園でいいピッチャーと対戦させてやりたかった」と唇をかみ、悔しさをにじませた。
期待の1発は出なかったが、この日もプロ5球団のスカウトが視察した。広島・尾形スカウトは「スイングスピードが速くて、守備もスローイングがいい。右の大砲でここまで飛ばせる選手はいない」と持ち前の身体能力の高さに太鼓判を押した。
有薗の高校最後の夏は終止符を打ったが、プロへの挑戦は続く。「この悔しさを上の世界で生かしていきたい。球界を代表するようなバッターになりたい」。夏に成し遂げられなかった夢を胸に、新しい世界へ飛び込む。(水上 智恵)