筑波大DF角田涼太朗、大学の3年半は誇り「自分らしく大学に進んで、成長できた」横浜FMとプロ契約

スポーツ報知
筑波大DF角田涼太朗

 横浜FMは7日、筑波大DF角田涼太朗(22)と7月1日付けでプロ契約を結んだと発表した。7月からチームに合流しており、8月6日のG大阪戦(パナスタ)より出場可能となる。

 90分間の終わりを告げる笛が鳴ると、角田は拳をぐっと握りしめ、表情を緩めた。6月26日、関東大学サッカーリーグ前期最終節で筑波大は慶大に2―1の逆転勝利。角田にとって、筑波大の3番を背負ってピッチに立つラストマッチだった。

 「この3年半は自分にとって、本当にこのうえない幸せな時間だったと思っています。自分らしく大学に進んで、ピッチ内外で、特に人間性は成長することができたのかなと。これからJ1の舞台に立てるのも、大学サッカーの道に進んだおかげ」

■1か月の海外遠征 大きく変わった”サッカーへの意識”

 全国高校選手権で初優勝を達成した前橋育英高から、「人間関係を広げたり、セカンドキャリアについても考えたい」とJ2クラブではなく大学進学を決意。当時4年生のDF鈴木大誠(徳島)ら頼もしい上級生に背中を押され、新鮮な気持ちと少しの緊張を胸に、開幕2戦目で大学リーグデビューを果たした。中心選手として起用される中、ピッチ外でも一人一人のサッカーに対する高い意識を肌で感じ取り、角田に大きな転機が訪れた。

 1年時の夏、全日本大学選抜や世代別日本代表、筑波大の活動で、約1か月日本を離れた。試合続きの過密日程を乗り切るために、蹴球部で陸上トレーニングの指導をする研究生から紹介されたのが、コンディションを整え、フィットネスを向上させるメニュー。これが日々の意識だけでなく、プレースピードにも変化をもたらした。

 「周りのおかげもあって、体への目の向け方はすごく変わりました。プレーでも、大学レベルでは走り負けることが基本なくなった印象。出足が速くなったり、ルーズボールへの反応でも相手より一歩先に足が出たり、以前より体に無理が利くようになった感じがします。大学は自由があるぶん、自分が何もしなければ特に進化しない。変化できたのはあの時があったからです」

■栄養を学び自炊も

 リーグ2位で終えたルーキーイヤーは「できすぎなくらい」と新人賞も獲得。貪欲な向上心を持ち、それまでは定食屋などで食事をすませることがほとんどだったが、より体を気遣って2年生を迎える頃からは自炊にも挑戦した。

 「自炊し始めてからは料理が楽しくなって。大体バランスよくそろえるようにしながら、主菜はアプリで見て美味しそうだなって思ったものを作っていました。豚汁はけっこう好きです。授業でも栄養学は学びましたし、蹴球部には栄養研究室の方がついてくれて、食事の写真を送ったり個別でサポートもしてくれました」

■プロ内定、最上級生としての覚悟「再醒」

 空中戦や対人の強さ、鋭い予測と判断力、攻撃参加、左足の精度。自己分析力も高め、センターバックとして着実に力をつけた角田は3年時の10月にマリノスへの加入内定を発表。Jリーグデビューも果たした。

 だが2016年全日本大学選手権優勝、17年リーグ優勝と実績ある筑波大はここ3年大学タイトルに手が届かず。「大学でもタイトルを取るつもりでやってきた。自分が主力で出ながらタイトルを取れなかったのは力不足」。仲間とつかむ一勝の喜びを味わうと同時に、いくつもの悔しさを積み重ねた。19年ユニバーシアード優勝後、筑波大に戻って喫した公式戦7連敗には「悔しいというか本当に苦しくて。忘れられない」。その感情こそが、ここまで角田を突き動かしてきた。

 「悔しい思いは、そのときはもちろんマイナスな感情ですけど、自分はすごくいい感情だと思っています。負けて悔しいって思わなくなったら、もうそれはアスリートじゃない。悔しさを大切に今までサッカー人生を歩んできているので、糧にしたいですし、『あれがあったから』って言えるようになりたい。悔しさを燃料に、悔しさの積み重ねで自分はここまでこられた」

 だからこそ、並々ならぬ覚悟を持って挑む4年目だった。筑波大の宣揚歌に登場する「醒(さ)めて起(た)て」というフレーズを基に、最上級生で話し合ってシーズン始めに掲げたスローガンは「再醒」。ピッチ内外で圧倒的な筑波を取り戻したい―。そんな願いを込めた。

■後輩へと継承

 「この先のキャリアを考えたとき、少しでも早く上のステージでプレーしたほうがいい」と前期リーグを区切りに部を離れる決断をしていた角田。自分を一回り二回りと大きくしてくれたチームに、そしてこれからの筑波大を担う後輩に、最大限何かを残したいと考える思いは人一倍強かった。

 「まわりに覚悟だったり、今までの自分の経験は伝えていきたかったです。前期の結果はそんなに良くなかったですが(5勝6敗)、これからの糧にしていかないといけないですし、少しでも後輩に何か伝えられていたらうれしいな、と思います」

 全体練習後は積極的に後輩とトレーニングに励み、同じポジションの選手からアドバイスを求められるなど、下級生にとって学ぶべき存在になっていたはずだ。角田が1年時、上級生のすごみを感じ「こんなふうになっていかないと。でもなれるかな…」と抱いた漠然とした不安。だが十分、最上級生としての姿を示していたに違いない。

■冷静と情熱の間で

 DFリーダーとしてチームを引っ張る立場になり、自身の戦いぶりに変化を感じているという。「ザ・冷静」だった高校時代から、内に秘めた情熱がより表に出るプレーヤーになった。

 「心は熱く、頭は冷静に。センターバックは常に頭はクリアじゃないといけないと思うので、そこはぶらさずに。でももっと見ている人だったり、一緒にやってる人に何かを伝えられる選手でありたいなと思います」

 喜怒哀楽という言葉では到底表しきれない、濃密な3年半。すべてを血肉にたくましく成長を遂げ、その進化はこの先も続く。筑波大の誇りを胸に、大学出身選手としての自負を胸に、横浜F・マリノスの一員として新たな一歩を踏み出す。偉大な先輩たちに続き、次はプロの世界に”角田涼太朗”の名をとどろかせる覚悟だ。(小口 瑞乃)

サッカー

NEWS読売・報知 モバイルGIANTS 個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真 法人向け紙面・写真使用申請